営業継続と出店拡大こそ地域復興への貢献になる--ゼンショー会長兼社長 小川賢太郎
外食業界における東日本大震災のダメージは、“四重”に渡る。店舗の被災、計画停電、自粛ムード。そして食品の放射能汚染だ。こうした幾重もの影響を受け、3月の外食市場全体の売り上げは、前年比1割減と過去最大の減少幅を記録した(日本フードサービス協会調べ)。
外食各社の被災店舗復旧は進みつつあるが、夏場に向け計画停電のリスクは残されたまま。自粛ムードの解消も容易ではない。食品の放射能汚染も収束の見通しが立たない状況に、業界全体は直面している。
売上高で前期に日本マクドナルドを抜いて業界首位に立ったゼンショーは、直営店を軸に牛丼からファミリーレストラン、ファストフード、焼き肉まで幅広くチェーン展開しており、外食業界の代表といえる。震災の影響はどう出たのか。今後の電力不足、消費減退、食の安全という難局にどう対処するか。小川賢太郎会長兼社長に聞いた。
──主力の牛丼店「すき家」を中心に、東北地方にも多くの店舗を展開しています。
全国3978店のうち894店が、震災当日、営業不能となった。震災直後は店舗と電話がつながらず、現状掌握に終夜を費やした。
その後の店舗の営業再開は、着々と進んでいる。4月下旬段階で営業停止店舗は20店弱。全店の99%以上が通常どおりの営業に戻っている。3月24日には宮城県仙台市の食材加工工場が一部稼働し、全国27工場、26カ所の物流センターは、現在すべて正常に稼働している状態だ。
──店舗設備や什器の破損はすぐに修復できたとしても、食材の配送面で支障は生じませんでしたか。
ゼンショーグループは、原材料の調達から仕入れ、製造、物流、店舗での商品提供まで一気通貫で手掛けている。この仕組みが震災後の局面で力を発揮した。
たとえば物流に必要な燃料の補給。三重県の物流センターから東北の物流センターに1万リットル分に当たるドラム缶50本の軽油を移動させた結果、滞りなく食材の配送を行うことができた。スーパーでは一時なかなか手に入りにくかった納豆も、供給を一度も切らしていない。「納豆を食べたければすき家に行け」という話も出たと聞いている。
迅速な復旧は、こうして食材の自社管理を徹底しているからこそ。一部でも外部業者に委託していれば、実現できなかった。全店規模で直営方式を取っているため、従業員の意思も共有しやすい。フランチャイズ方式であればスムーズにいかない。
震災後、われわれは「社会インフラとして機能すべく、本部、物流、製造が一丸となって、営業停止中の店舗の早期復旧を目指す」と社内外に表明した。これは外食業界トップとしての責任であり、プライドだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら