台湾で「日本酒の市場が拡大」背景にある事情 コロナ禍で輸出が拡大、提供する店も増える

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イベントは2023年2月初旬に、コワーキングスペースと昼飲み居酒屋が楽しめる「新富町文化市場」で開催された。ここは日本統治時代には、市場だった場所でもある。

この夜、20人ほどの参加者を前に、3時間のイベントが開かれた。まずは前座として、中国語と日本語の2カ国語使用の落語「二人酒」が披露された。お花見を軸にした演目で、ひとしきり笑ったあと、真打ち登場、日本酒の蔵元が舞台にあがった。

1596年創業で神田猿楽町に店を構える豊島屋本店の吉村俊之社長が登壇し、同社の5銘柄を提供しつつ、来し方や、各銘柄の特徴、酒に合う肴など日本酒の楽しみ方を語っていく。

吉村社長自ら、会場に集まった台湾の顧客に語りかけ、会場からの質問にも丁寧に答えていった(撮影筆者)

客は、歴史的な資料などとあわせて、実物を試飲できる。参加者同士であれこれ語り合ううちに、最後には「日本に行ったときに見学したい」という声も出ていた。筆者も参加者の1人として、すっかり魅了された。

台湾で行われる日本酒イベントは、蔵元、つまりは企業単体だけではない。7月には愛媛県が県単位で来台してPR活動していたし、「台北国際酒展」と銘打つフェアもある(2023年は11月17日〜20日の予定)。フェアはワインやウイスキーなどアルコールの合わせ技だが、大きなPRの場に違いはない。とりわけ今年は、コロナ明け本格PRの場となる。

コロナ禍で輸出がさらに拡大

台湾の日本酒輸入は昔からあったが、大きな弾みがついたのは、2002年、台湾がWTO(世界貿易機関)に加盟したことに始まる。ここで民間業者による輸入が解禁され、大きく門戸が開かれた。2005年から5年ごと、さらに直近2年の輸出金額をピックアップすると次のようになる。

リーマンショックが起きた2008年から数年は低調だったが、2013年から上昇に転じ、2020年代に入ると一気に加速。新型コロナ拡大で日本と台湾の往来が途絶えたこともかえって追い風になったのか、さらに輸出が拡大。昨年には20億円の大台を突破。2005年と2022年を比較すると約3.4倍だ。

輸出額で見ると、中国、アメリカ、香港、韓国、シンガポールに次いで台湾は6位。2005年はアメリカの次だったので、他国・地域に押されているものの、依然として人気は高い。

同様に、日本から輸出されるビールは、2005年約10億円、2022年約26億円と伸び率が2.6倍となっていることを見ると、アルコール飲料で台湾への輸出拡大は日本酒に軍配があがる。

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