「貧困不良少年」が経済学のスターになった! 規格外経済学者、フライヤー教授の快進撃

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──具体的に必要なことは。

公立学校のシステムをドラスチックにテコ入れすることが必要だ。教師の質を向上させ、生徒が学校にいる時間を延長する。そして、どの地域にいる生徒に対しても期待値を高く設定することだ。最初から期待値が低ければそのレベルにも達さなくなってしまう。だが、残念なことに政治家の多くが教育改革は必要だと知りながら実際は動かない。

格差が広がれば米国は競争力を失う

──政治家に教育改革を働きかけることはないのですか。

もちろんやっているが一筋縄ではいかない。まず政治家にとって教育改革は手間がかかる割に得票につながりにくい。教員組合や各種業界団体など反対勢力も多い。たとえば、テキサス州の学校で登校期間を延長する取り組みを行ったとき、州の観光協会から猛烈な反発を受けた。子どもが学校にいる時間が長くなると、バケーションに行く時間が減るからという理由だ。

──格差が広がり続けた場合、米経済にどう影響しますか。

ローマ帝国のように米国もいつかは競争上の優位性を失うだろう。問題は、米国は自ら改革し、こうした課題を解決し続けられるかだが、現時点ではその兆候は見えない。

──アメリカンドリームは消えうせたのでしょうか。

そうとは考えたくないが、夢を実現するには努力するだけでなく、就職しやすい大学に入るなどスマートさが必要になったのは確かだろう。つまり、アメリカンドリームも変わり始めているということだ。

ただ、私のような例は米国でしか起こらない。6月にオバマ大統領に会った際、「私のような男が大統領に会えるのはこの国だけだと思います」と伝えたら、「私のような男が大統領になれるのもこの国だけだ」と答えてくれた。これが米国でも例外中の例外ということになれば、私たちは本当に岐路に立たされていることになる。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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