世界でも突出した長時間労働、「教員の働く環境」日本と他国の決定的差 国際比較調査から見える日本の「リソース不足」

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こうした状況は、教員・校長の勤務環境や学校の学習環境に焦点を当てた国際比較調査、TALIS2018でも明らかになっている。例えば、日本の教員の通常時の1週間の仕事時間は、小学校教員が54.4時間、中学校教員が56時間(参加国平均38.3時間)と最長だ。業務の内訳を見ると、下の図のように、日本は小中学校ともに事務業務の時間が他国と比べ最長となっている。中学校ではとくに課外活動の仕事時間が長く、世界的に見ても部活動指導の負担が大きいことがわかる。

黄色が日本(小学校)、オレンジ色が(中学校)、灰色が参加国平均(中学校)。カッコ内は前回2013年調査
出所:国立教育政策研究所「TALIS2018報告書vol.2―専門職としての教員と校長―のポイント」

とりわけ事務は教員の大きな負担になっているようで、「事務的な業務が多すぎる」ことに「非常によく」または「かなり」ストレスを感じる日本の教員は中学校で52.5%、小学校で61.9%(参加国平均46.1%)に上る。

出所:国立教育政策研究所「TALIS2018報告書vol.2―専門職としての教員と校長―のポイント」

また、質の高い指導を行ううえで、支援職員の不足を感じる日本の中学校の校長は55.8%、小学校の校長は46.3%と参加国平均30.8%を上回っている。

黄色が日本(小学校)、オレンジ色が(中学校)、灰色が参加国平均(中学校)。
出所:国立教育政策研究所「TALIS2018報告書vol.2―専門職としての教員と校長―のポイント」

つまり、教員の長時間労働の改善に当たっては、事務業務と部活動指導の軽減、そして人的リソースの調整が大きなポイントになると考えられる。

受け持つ業務が多すぎる!仕事の棚卸しと削減が必要

藤原氏は、「日本は教員が受け持つ業務が多岐にわたり、仕事の棚卸しと削減も必要」だと話す。例えば、文科省の「令和3年度諸外国の教員給与及び学校における外部人材の活用等に関する調査」(PwCコンサルティング委託)によると、対象10カ国のうち、調査対象の38の業務に何らか教員が関わっている業務の割合は日本が92%と最も多い。

出所:PwCコンサルティング「令和3年度諸外国の教員給与及び学校における外部人材の活用等に関する調査報告書」(207ページ)を基に藤原氏作成

上の表から、他国ですでに学校や教員以外が担っている国が多いと確認された業務(薄い黄色と濃い黄色でハイライトした業務)を抜き出してみた。

【児童生徒の指導に関わる業務】
登下校の時間の指導・見守り/欠席児童への連絡/教材購入の発注・事務処理/体験活動の運営・準備/給食・昼食時間の食育/休み時間の指導/校内清掃指導/運動会、文化祭などの運営・準備/進路指導・相談/健康・保健指導/問題行動を起こした児童生徒への指導/授業に含まれないクラブ活動・部活動の指導/児童会・生徒会指導/教室環境の整理、備品管理

【学校の運営に関わる業務】
校内巡視、安全点検/国や地方自治体の調査・統計への回答/文書の受付・保管/学校徴収金の徴収・管理/学校広報(ウェブサイト等)/児童生徒の転入・転出関係事務

【外部対応に関わる業務】
家庭訪問/地域行事への協力/地域のボランティアとの連絡調整
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