同和のドン・上田藤兵衞を「表と裏」両面から描く 『同和のドン』書評

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『同和のドン 上田藤兵衞 「人権」と「暴力」の戦後史』伊藤博敏 著
同和のドン 上田藤兵衞「人権」と「暴力」の戦後史(伊藤博敏 著/講談社/1980円/352ページ)
[著者プロフィル]伊藤博敏(いとう・ひろとし)/ジャーナリスト。1955年生まれ。東洋大学卒業。編集プロダクション勤務を経て84年からフリーに。経済事件などの取材力で定評がある。著書に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』など。

部落差別(同和問題)は若者にとって遠いものになりつつある。

2022年の政府世論調査によれば、18〜29歳の半数近くが「学校の授業で初めて知った」と回答し、15%は存在を知らないという。部落解放運動が、差別を糾弾するものから、より普遍的な人権擁護へとその性格を変化させたことも関連しているだろう。

戦後の暴力団・同和・経済事件史

ただし、部落解放運動はひとまとまりではない。101年前に結成された全国水平社の流れを汲(く)み、従来社会党との縁が強かった部落解放同盟は、差別の存在とその解消を強調してきた。対して、共産党系の団体は「部落問題は基本的に解決した」として2004年に組織の衣替えを行ったことが象徴するようにまったく異なる立場を取ってきた。自民党はというと、糾弾より融和を目指す全日本同和会と連携したが、1985年にそこから自由同和会を分離独立させた。

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