森山良子さん&松井五郎さんによる校歌も話題の臼田小、統合への道のり 増える学校統合「反対の声や課題」どう向き合う

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2023年4月、地域の公立小学校4校が統合されて誕生した長野県の佐久市立臼田小学校。森山良子さんと松井五郎さんによって作られた校歌『いつも希望はここにある』も話題を呼び、臼田小はいくつものメディアに取り上げられている。学校の統合は少子高齢化に伴って増加の一途をたどっているが、同校の再編もその流れを受けたものだ。ここに至るまでの過程や、開校してから感じる課題、これからの展望などについて、校長の井出誠一氏に詳しく聞く。

減り続ける児童数と学校数、長野県佐久市の小学校の例

長野県の佐久市立臼田小学校は、周辺の旧臼田小学校、田口小学校、切原小学校、青沼小学校の4校が統合されて2023年4月に開校した。新たな用地に建てられたピカピカの校舎で、初めての入学式を迎えたばかりだ。歌手の森山良子さんと作詞家の松井五郎さんのタッグで校歌が作られたこともあり、同校は開校前からメディアの取材を受けるなど注目されていた。新しい校歌『いつも希望はここにある』について、新生臼田小の校長である井出誠一氏はこう語る。

佐久市立臼田小学校校長
井出誠一氏

「5月下旬には、コロナ禍で中止されていた臼田地域のお祭りが4年ぶりに開催されました。その企画の一環でプロのコーラスグループを招き、本校の子どもたちと一緒に校歌を披露する機会に恵まれました。著名な方に作っていただいた歌であることはもちろん、子どもたちがすでに校歌をとても気に入ってくれていることがいちばんうれしい点です。この新しい校歌が、学校の歌としてだけでなく地域の歌として愛されていくことを期待しています」

校章も公募によって新しく作られた。旧臼田小卒業生である高校生の案を基にした校章はカラフルな星形で、一見して現代風なデザインだ。こちらも子どもたちや保護者にも好評を博しているという。

新しい校章を立体に起こしたモニュメント

また、新校になってから発足したPTA組織もポジティブな空気に満ちているそうだ。初代会長は「私にやらせてもらいたい」という保護者の立候補によって決まった。何をするにも「前年踏襲」では済まないため、保護者が統合前の各校の知見を持ち寄って考える必要がある。井出氏は「非常にクリエーティブな場にしていただいています」とほほ笑む。

だが、それぞれに歴史のある4校が一つになるまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。同氏はその経緯を振り返る。

「具体的に統合の話が持ち上がったのは7、8年前だったでしょうか。10年以上前から、やがて統合が必要になると予想はされていました。これは全国的な課題ですが、きっかけはやはり児童数の減少です」

下の図を見ると、全国の公立小学校と児童の数は一貫して右肩下がりを続けていることがわかる。1989年の数字と比べると、この30年間で学校数は2割以上、児童の数は同期間で約3割減っている。子どもや地域そのものの人口減少に伴って、学校が何らかの決断を迫られることはもはや避けられない状況だ。公立の中学校や高等学校も多くが存続の危機に瀕しており、全国の教員や保護者にとって、これは決してひとごとではないだろう。

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