少子化と統廃合で減る公立小「へき地教育」の斬新 小規模校をメリットに変えるICT先進事例

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平成が始まった1989年、日本全国には2万4608校の公立小学校があった。しかし、2021年にはその数は1万9032校にまで減っている(文部科学省学校基本調査)。その背景には少子化や平成の大合併などによる統廃合がある。一方、地理的条件や地域的な事情により、小規模校として維持することを選んだ地域もある。学校教育法では小学校の適正規模は12〜18学級とされており、11学級以下の学校は小規模校になる。さらに、5学級以下は過小規模校や極小規模校と呼ばれ、複数の学年の児童が1学級で学ぶ複式学級ができる規模とされる。こうした中、ICTで課題解決を目指し、小規模校のメリットを生かそうとする動きがある。そんな小規模校のICT活用の動きを追った。

適正規模に満たない小規模校の今

学力の向上だけでなく、集団の中で多様な価値観に触れ、互いに協力しながら切磋琢磨し、社会性を身に付ける場所。それが学校だ。

そのため、公立の小学校や中学校には適正規模の基準が設けられている。しかし、山間部や島などでは統廃合で適正規模を維持することが難しい。また、学校は地域の要でもあることから、小規模校・過小規模校として存続するケースも少なくない。文部科学省でも2015年から小規模校のメリットを最大化し、デメリットを最小化させるための取り組みを推進している。

こうした動きが起こる以前から、小規模校の教育に取り組んできた北海道教育大学 へき地・小規模校教育研究センターでは、21年11月に「第19回へき地・小規模校教育推進フォーラム2021」を開催。日本各地から集まった4名のパネリストがへき地や小規模校の課題を解決するICT活用の先進事例を発表した。

21年11月に開催された「第19回へき地・小規模校教育推進フォーラム2021」。和歌山大学教育学部教職大学院教授の豊田充崇氏、鹿児島県・徳之島町教育委員会教育長の福宏人氏、北海道・積丹町教育委員会教育長の十河昌寛氏、北海道教育大学札幌校准教授の前田賢次氏が登壇した
(写真:第19回へき地・小規模校教育推進フォーラム2021より)

学校管理下のSNSで児童が得たもの

「ICT活用の先進事例はへき地・小規模校から始まっているものが多い」

こう話すのは、自身も山間地域の中学校で社会科教諭として勤務した経験を持つ、和歌山大学 教育学部教職大学院教授の豊田充崇氏だ。

豊田充崇(とよだ・みちたか)
和歌山大学
教育学部教職大学院 教授
(写真:第19回へき地・小規模校教育推進フォーラム2021より)

豊田氏によると、和歌山県は県庁所在地にも複式学級を持つ学校があり、県内全域に小規模校が点在する。10年からは県とインテル、研究者の協業で「T21プロジェクト」を実施。1人1台端末で学校間の交流のほか、学校の管理下で学習目的のSNSを使い、へき地の小・中学校と大学の教育学部生がバーチャル学級を構築するなど、ICT活用事例を蓄積してきた。

「極小規模校では、先生も友達も家族のような存在。学級新聞などを作っても、見てくれる人が限られてしまいます。しかし、SNSを通じて外部の人に読んでもらい、コメントをもらうことで児童は創作意欲をかき立てられ、敬語や社会性を学ぶことができるのです」(豊田氏)

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