森山良子さん&松井五郎さんによる校歌も話題の臼田小、統合への道のり 増える学校統合「反対の声や課題」どう向き合う
「バスの運行時刻によって、学校の日課に制限が出る可能性があります。限られた時間をどう有効に使って活動していくかは、本校の教育において非常に重要なポイントになるでしょう」
もう1つ懸念されることは子どもたちの体力低下だ。同校では、通学距離が3.1kmを超える子どもたちはスクールバスを使うことになっているが、「バス通学によって歩く距離や時間が減ることが体力低下につながらないか、注意深く見ていく必要があると考えています」と井出氏は語る。
「初年度が始まったばかりで、今はとにかく試行錯誤の日々です。教員数は増えているものの、想定外のことも多く、先生方は楽になったといえる状況ではありません。ただ、教員1人当たりの主な校務分掌は2つから3つ程度と、4校体制の時に比べれば減っています。2、3年はかかるかもしれませんが、落ち着いてくれば、統合前より余裕を持って働いてもらえると思います」
何かと苦労は多いが、「統合しなければよかった」というような後ろ向きの声は、教員はもちろん地域からも出ていない。「もっとこうしたらいいのではないか」という建設的な意見が寄せられることは多々あり、井出氏は「いろいろな声を寄せ合えるのはいいことです」と前向きに受け止めている。
「本校はすべてがこれから」と語る同氏は、教育においても新たなプランを練っている。4校に共通してあった行事の持久走を、どんな形で新校に落とし込むか。切原小で学習材料にされていた伝統芸能をどう生かすか、青沼小で親しまれていた焼き物の体験授業を続けることはできるか――。それぞれの地域に根差した多様な教育素材が集まったことを好機と捉えて、新生臼田小ならではの学習に反映させていきたいと考えているのだ。
「少人数制にもメリットはありますが、佐久市では、ある程度の児童数があってこそ生まれる子ども同士のつながりや関わりを重視する選択をしました。子どもたちは自分たちの学校がなくなることに寂しさを抱きつつ、『新しい学校が楽しみ』と言ってくれました。いちばん重要なことは、子どもたちが何を求めているか、その未来のために何ができるかを考え続けることだと思います」
(文:鈴木絢子、写真:臼田小学校提供)
東洋経済education × ICT編集部
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