オーナーとプロ経営者。水と油である2人の緊張関係が巨大企業を築いた。
業績は絶好調のセブン&アイ。しかし物言う株主から揺さぶられて袋小路から抜け出せない。『週刊東洋経済5月15日(月)発売号では「漂流するセブン&アイ」を特集。イトーヨーカ堂の改革やそごう・西武売却の舞台裏を徹底取材、なぜ構造改革を進められないのかその理由を探る。
1980年代にイトーヨーカ堂に中途入社したある人物は、本社中枢部に漂う緊張感にすぐ気づいた。社長である伊藤雅俊と、ナンバー2の鈴木敏文の間に対話がないのだ。「2人が会議以外で話をする様子を見たことがない。鈴木さんは、伊藤さんの部屋への出入りをチェックしていて面会した幹部には後で圧力をかけていた」。昨今は「資本と経営の分離」のお手本のようにいわれるセブン&アイ・ホールディングスだが、その原点は2人のカリスマの抜き差しならない対立関係だ。
ヨーカ堂の源流は東京の下町、北千住で伊藤が経営していた「羊華堂」である。伊藤がこの洋品店をスーパーに転換させようとしていた63年のある日、やせぎすな男が中途採用の面接に訪れた。出版取次大手のトーハンに勤めていた鈴木だ。
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