どうする?突然の「列車運休」旅慣れた人の対処法 計画通りに行かなくても楽しむ余裕を持とう

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行程をあきらめる

白紙に戻すことも必要だ。どうにもならないこともある。ファジアーノ岡山戦のあと、寝台特急サンライズで帰る予定だったが大雨で運休した。アビスパ福岡戦のあと、飛行機に搭乗して座席にまで納まったのに福岡空港の停電で欠航が決まった。いずれも翌日の朝から仕事であったが、幸い急ぎの案件はなく午前の休みをもらった。今であれば、リモートワークが可能な人はこうした事態を想定して最低限の仕事環境を用意しておくとよい。

むしろあきらめることで、新たな発見や楽しみに変えよう。

長崎から高速船で天草に渡ろうとしたときのことだ。2019年10月13日、V・ファーレン長崎戦の翌日である。青空が広がる朝、10時20分発の船に乗るべく、長崎駅近くから港のある茂木行きの路線バスに乗った。夜は繁華街として賑わう思案橋を過ぎ、高台に出て町を見下ろす。山間のくねくねとした道を抜け、30分弱で茂木港に到着した。

茂木港 高速船乗り場
茂木港の天草行き高速船乗り場(筆者撮影)

乗船場に向かうと欠航の案内が出ているではないか。実は台風が2日前に過ぎたばかりで、まだ波が高かったのである。呆然としてベンチに座り込んだ。

予定になかった町での出会い

けれども、待合室では地元産の野菜や鮮魚が販売されており、奥には喫茶コーナーもあって地元の方が食事をしていていい雰囲気であることに気がついた。天草行きはあきらめ、近隣を散策することにした。上空にはトンビが舞っている。小さな鳥居と祠の横を通り過ぎ、Sマートという長崎市内に展開している地場のスーパーに入ってみる。旅先のスーパーは日頃見かけない商品があるので楽しい。

都内の催事でも出店する老舗の和菓子店「一〇香」の本店があるではないか。発見した気持ちになる。近くに見つけた食堂に入り昼食とし、海沿いならではの刺し身と煮付けを味わった。見知らぬ町を歩くことは、その土地の家屋や商店、住む人々の日常を眺められ、観光地を訪れるよりもむしろ趣深いように思う。

この日は結局再び路線バスで一旦長崎駅に戻り、島原で宿泊、翌日フェリーで熊本に出た。もともと天草から熊本に渡る予定だったので、結果としては辻褄があったことになる。

いずれにせよ計画を立てるときは、余裕を持った行程にすることが望ましい。なにかあってもかなりの確度で吸収できるからである。そもそも数分~数十分の乗り継ぎが続くような行程では、計画通りに移動できたとしても、体力的にも精神的にもきつくなるだけだ。

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八田 裕之 週末旅行家

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はった ひろゆき / Hiroyuki Hatta

1967年生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)工学部電子通信工学科卒。JR全線完乗した鉄道ファンにして、Jリーグをこよなく愛する。平日は会社員だが休日はJリーグ遠征で全国奔走の日々。フュージョンバンド「Quiet Village」のリーダーとしてギターと作曲を担当、オリジナルアルバム発表、鉄道コンピレーションアルバム参加など、音楽活動も行う。

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