日中の懸案?実は「尖閣」は緊迫していない 警戒すべきは民間活動家の暴発が起こること

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日中両国とも、実効支配の積み上げは容易である。上陸占拠を含め、やる気になればいつでもできる。

だが実効支配を積み上げようとしたところで相手国側の対抗策で相殺され、実績には至らない。片方の国が積み上げても、対抗として相手も同様に積み上げを行うため、意味をなさないのだ。

2010年の漁民逮捕でもそうなった。日本側による積み上げに対し、直後から中国側も尖閣付近でのパトロールを実施し、その効果を相殺した。

相手を出し抜くことはできない

相手を出し抜こうと島を上陸・占拠したところで利益は得られない。相手国は封鎖等により島への輸送を止め、その利用を許さないからだ。海底資源開発や漁業も妨害することは必至であり、島を支配しても、そこから実際の利益を上げることは難しい。

いずれにせよ、実効支配の積み上げに対しては、自国の不利益も顧みない報復が行われる。日中国民は、尖閣をそれぞれの領土だと信じている。無人島であっても積み上げは侵略だと国民感情は吹き上がる。このため政府はエスカレーションを強要される。柔軟な対応はできない。もし柔軟で理解のある行動をすれば、「侵略を見過ごした」として国民の信頼を失い、場合によっては政権が打倒されるおそれがあるためだ。

これは日中相互で増幅する。一方での吹き上がりとその政府による報復は、もう一方の吹き上がりと報復を呼ぶ。際限のないエスカレーションとなり、泥沼化する。両国政府はこの泥沼化を恐れている。このため、尖閣は日中双方で現状維持となっているのである。

両国が互いに軍隊は投入しないルールは明瞭である。公船投入はそれぞれの国内警察権の範囲に留まる行政措置である。国家による対立意志を示す軍隊の投入とは格段の差がある。これは国有化直後の対立の中で自衛隊投入について問われた山口壮外務副大臣が「自衛隊投入は回避する」と明言したとおりになっている。

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