新品川区長・森澤恭子、所得制限なしの「子育て3つの無償化」に込めた思い 子ども一人ひとりに合わせ多様な学びの実現へ

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子育てや教育分野の課題が山積している日本。独自の支援策を打ち出す自治体も出てきており、給食費無償化の動きなどは全国に広がりつつある。こうした中、注目されている自治体の1つが、品川区だ。昨年12月から品川区長を務める森澤恭子氏は、同区初の女性区長にして、2人の小学生の子どもを持つ現役の「子育て世代」。重点施策の1つに「一人ひとりをささえ、伸ばす 子育て・教育で選ばれる しながわ」を掲げる森澤氏に、その狙いや思い、今後実現していきたい教育関連の施策について話を聞いた。

「子育て支援」は、日本という国の存立にも関わる問題

――新区長として、子育て支援を重点施策の1つとして掲げられています。その理由についてお聞かせください。

私は、子育て世代や現役世代が生き生きと働き、暮らしていける街こそ活力やにぎわいが生まれると考えています。そうして地域経済が活性化し税収も増えれば、高齢者や障害者の福祉も充実させることができる。そんな好循環をつくっていきたいのです。

品川区長の森澤恭子氏

子育て支援はすぐに結果が出るものではないので、長期的な視点が必要ですが、国もこれまで少子化対策に積極的ではなかったから、さまざまな問題が顕在化している。今ここに手をつけなければ、将来的に日本という国自体の存立にも関わってくる問題だと考えるべきでしょう。

――いつ頃から、そういった思いを持たれるようになったのでしょうか。

大学時代の卒業論文が、「少子化を通して考えるこれからの日本のあり方」というテーマでした。そこでは、ジェンダーギャップに対する問題意識とともに、「子育ては家庭のみならず、国や地域が責任を持って支えていくべきだ」といった主張を展開しています。最近読み返して自分でも驚いたのですが(笑)、20年前から問題意識は変わっていないようです。

会社員を辞めて都議会議員に挑戦した大きな理由も、自分自身が子育てを通して改めて問題意識を持ったことにあります。長女を出産後、夫の仕事の都合でシンガポールに行くことになり、私は企業の正社員を辞めて帯同したのですが、帰国後の再就職が困難に満ちていたのです。当時、子どもは0歳と2歳。フルタイムの仕事に就くことは難しいので、再就職先を見つけるのに非常に苦労しました。

何とか内定を得ることはできましたが、保育園を探すのも大変で、2人の子どもをそれぞれ違う保育園に預けて仕事を再開することに。子育てをしながら仕事をするのは本当に難しいと感じましたね。その根本原因は、政策決定の場に女性や子育て世代が少ないことにあるのではないかと考えました。

――それで都議会議員になられたと。そこからなぜ、区長を目指すようになったのですか。

都議会議員時代は女性やマイノリティーと呼ばれる方々の課題解決や街づくりなど幅広く活動していましたが、とくに子育てや教育、福祉など区政に関わるご相談がとても多かったのです。そこで、生活に最も身近な課題を直接的に解決する仕事に取り組んでみたいと思い、区長選にチャレンジすることにしたのです。

「児童虐待」や「孤独な子育て」をなくすためアウトリーチを

――昨年12月に区長に就任されたばかりですが、早速4月から、新たな施策の実行を順次進めていらっしゃいます。とくに所得制限なしで実施する「第2子の保育料・区立学校の給食費・高校生までの医療費」の無償化、0歳児家庭への「おむつ宅配定期訪問」「未就園児の新たな預かりモデル」などの施策を打ち出した理由とは何でしょうか。

子育てについて地域や社会が応援している、支えているというメッセージが何よりも重要だと思ったからです。日本は周囲の理解不足や制度の問題などもあり、まだまだ子育てをしづらい環境にあります。そうした課題を解決していくために、3つの無償化のように子育て世代の負担を軽減していくことは、とても大切だと考えています。

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