新品川区長・森澤恭子、所得制限なしの「子育て3つの無償化」に込めた思い 子ども一人ひとりに合わせ多様な学びの実現へ

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また、「おむつ宅配定期訪問」の目的は、各家庭におむつを届けるだけでなく、児童虐待をなくすために、緩やかな見守りを定期的に行っていくことにあります。児童虐待の未然防止は都議時代から取り組んできた課題ですが、とくに都心は孤独な子育てに陥りがちです。品川区もマンションの供給が進んでいて子育て世代を中心に人口が増加傾向にありますが、転入者も多く、地域とのつながりがつくりにくいといった都心ならではの課題があります。

区が子育て家庭にアウトリーチし、もし困っていることがあれば、迅速に支援機関や行政サービスにつなげていく。そうやって児童虐待や孤独な子育てをなくしていきたいという強い思いがあります。

「未就園児の新たな預かりモデル」も、同じ問題意識が根底にあります。現状、保育園は保護者が就労していなければ入園できません。しかし、専業主婦のご家庭でも24時間、子どもに向き合うことはとても大変なこと。孤独な子育てを防ぐためにも、親の就労にかかわらず、子どもが保育を受けられることが重要だと考えています。

――そうした政策をつくるうえで、区民のニーズはどのように集めているのですか。

選挙の際もインターネットアンケートやタウンミーティングによってニーズを拾い上げましたが、今後は民意を施策に反映させるため、全区民アンケートやタウンミーティングを行っていく予定です。例えばこれまでも「明石市のような子育て支援策を行ってほしい」といった声をよくいただきましたが、やはり子育て世代は、支援に積極的な自治体の情報をキャッチしていると感じます。また、小中学生に配布されている1人1台端末を通してアンケートを行い、子どもたちの声を施策に反映させられないかと考えているところです。

今、国でも子育て支援に力を入れようとしていますが、すでに市民のニーズをくみ上げて独自の子育て支援を行っている自治体が多く出てきています。国も新しい政策を一から打ち出すというよりも、各自治体の取り組みを後押ししたり、横展開できたりするような仕組みをつくったほうがいいのではないでしょうか。とくに「学校給食の無償化」については、自治体間の格差を生まないためにも国が乗り出してほしいと思っています。

――23区の現職女性区長としては足立区、杉並区に次ぐ3人目、品川区では初の女性区長とのことですが、女性がトップに立つことの意義についてどうお考えでしょうか。

政治の世界では、まだまだ女性リーダーが少ないのが現状です。そのため、女性がトップに立つと、ジェンダーバランスの偏りに気づきやすいという利点があると感じます。例えば、会議中にハッと気づくと、女性は私1人だけのときがよくあります。区の審議会や委員会などに出席しても、ほとんど男性です。多様な意見を施策に反映させるためには、ジェンダーバランスの是正は大きな課題だと考えています。

また、私の場合は、子育てをしながら仕事をすることの大変さを経験してきた当事者でもあります。今も夫の協力なしに区長の仕事はできませんし、夫のほうも会社勤めなので在宅勤務などを駆使しながら子育てや家事に奮闘している状況です。そうした大変さは、ママ友やパパ友からもたくさん聞きます。子育てや介護をしながら仕事をしている人たちにとって働きやすい環境をつくっていくことも、取り組むべき課題と捉えています。

不登校など学校の課題解決は「地域や外部人材との連携」が必要

――教育政策に関しては、「学校でのトラブルの相談体制」「発達障害児支援」などを強化されるとのことですが、どのような課題意識があったのでしょうか。

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