台湾新幹線「新型車」日立・東芝連合受注の全内幕 難航した価格交渉、どう折り合いをつけた?

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次の要因は、日本の車両をそのまま台湾に持ち込めるわけではなく、台湾の法律や基準に合致させる必要があるという点だ。

よく知られた例では、台湾では火災発生時に乗客が窓ガラスを割って脱出できるような対応が法令で求められているため、窓ガラスの材質変更が必要になる。それ以外でも、700系と700Tでは運転室専用ドアの有無や運転台のレイアウトなども異なる。新型車両ではこうした点もN700Sから変更される可能性がある。さらに、高鉄の運行システムに合わせるような、見た目ではわからない変更もあるだろう。

台湾高鉄700T 非常口
台湾高速鉄路700Tの車内に設置された脱出用のハンマー(左)と非常口となる窓(記者撮影)
台湾高鉄700T 先頭部側面
台湾高速鉄路700Tは、700系にはある運転室側面のドアがない(記者撮影)

このような仕様変更にはそのためのプロジェクトマネジメントが必要になる。設計コストのほか、新たな部品の選定、ほかの構成要素との調和確認に要するコストもかかる。スケジュール管理などの人件費もかかる。メーカーはこうしたコストを車両価格に含める。

台湾では、近年開業したLRTの車両などで部品の国産化率を高める機運がある。今回の高速鉄道の新型車両においてもN700Sに使用されている部品に代わって台湾製部品が採用するとしたら、性能確認やほかの構成要素との調和確認などのコストがその分だけかさむ可能性がある。

議論を重ねて見出す着地点

事情をよく知る関係者は、「高鉄と日立・東芝連合が真摯に協議を重ねて、理解が深まり、合意に至った」と話していた。つまり、「高いから少しまけて」といった単純な話ではなく、構成要素ごとに「この方法は○○円かかるが、ほかの方法にすれば××円になる」といった具合に一つひとつ議論を重ねて、着地点を見出したのだ。

早ければ2026年には登場する新型車両はどのようなデザインになるのだろうか。日台友好のシンボルとなるような列車であることを願ってやまない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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