陥没乗り越え延伸、福岡地下鉄「七隈線」の期待度 距離は短いが効果大?沿線住宅地の人気上昇

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「あの陥没」とは、延伸工事中に博多駅前で起きた大規模な道路陥没事故のことだ。2016年11月8日早朝、JR博多駅前から天神方面へ延びる大通り「はかた駅前通り」地下のトンネル掘削現場が崩落、最終的には幅・長さ約30m、深さ約15mにも及ぶ巨大な穴が開いた。

幸いにも直接のけが人はなく、道路の復旧も約1週間というスピードで完了したが、七隈線の工事は陥没事故による中断と地盤改良などのために工期が長引き、福岡市交通局は当初予定していた2020年度の開業を2022年度に延期。事業費も当初の約450億円から、陥没による影響と物価上昇分を含め約587億円まで膨らんだ。

開業の遅れとコスト増はあったものの、延伸が生む効果は大きい。天神南駅から空港線天神駅までの乗り換えが解消されたことで、七隈線各駅から博多までの所要時間は約14分短くなり、これまで約40分かかった橋本から博多へは28分になった。各駅の入り口には「博多まで〇〇分」のラッピングが張り出され、利便性向上をPRする。

七隈線橋本駅
終点の橋本駅。延伸開業により「博多まで28分」と所要時間短縮をアピールする(記者撮影)

乗り換え解消で沿線不動産に注目

福岡市は天神と博多の2大拠点で「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」と呼ぶ再開発促進事業を進めており、七隈線は両地区を結ぶ新たな動脈となる。都心部の回遊性向上による商業・観光面での期待とともに、これまでネックだった乗り換えの不便さが解消されることで沿線のマンションや住宅にも注目が集まっている。

福岡市地下鉄七隈線路線図

福岡市内で居住地として人気の高い「ブランド力」のある路線は福岡空港、博多、天神といった市内の主要拠点を通る地下鉄空港線だ。三好不動産(福岡市)広報課の齊藤寛シニアマネージャーによると、七隈線沿線は2005年の開業後もしばらくは人気とはいえない状態だったが、六本松駅付近の九州大学キャンパス跡地開発が進展した2015年ごろから状況が変化。とくに、JR九州が手がけたマンション「MJR六本松」は福岡で初の「億ション」として注目を集め、同マンションの成功を受けて六本松や隣駅の別府(べふ)駅周辺などにマンションが相次いで建設されるようになったという。

別府駅周辺
複数のマンション建設が進む別府駅周辺(記者撮影)

「この5年くらいで、六本松や別府は賃貸・分譲ともに空港線の人気エリアである大濠公園や西新に価格が近づきつつある」と齊藤氏はいう。別府駅周辺では複数のマンションが建設中で、七隈線の延伸開業による利便性向上によって今後も人気が高まり続けそうだ。

また、これまで「学生の街」と認識されていた七隈駅周辺でもファミリー向けアパートに動きがあるといい、齊藤氏は「こういった地域も今後家族向け需要が増えてくるのではないか」と話す。

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