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完全分業制となった「特殊詐欺」組織のお粗末 指示役、実行部隊、運搬役と分断された犯行

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特殊詐欺グループの特徴は、個々に役割が分かれ、分業体制になっている点だ。

犯行で使用されたコインロッカー
高齢者からだまし取った金が一時的に預けられていたコインロッカー(撮影:田崎 基)

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「金庫に2億の金がある」。指示役の男は言った。

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「人には言えない、隠している金がある。脱税した金なので、奪われても通報できない」

男たちはそう聞かされ、神奈川県鎌倉市の現場へ向かった。2022年7月初旬のことだ。

初夏の海風が吹く夕暮れ時の住宅街に3人の男が集まった。リュックの中に用意したのはバールとガムテープ、目出し帽。現場を主導したのは横道利雄(仮名、逮捕当時22)だった。自身の名前を音読みにして“リオ”と名乗っていた。

もう1人は塗装工の東山泰人(同、23)。東山は友人の木村嘉六(同、22)を誘い込んだ。横道と東山は別々にツイッター上で「闇バイト」「グレーバイト」の募集を検索し、応募していた。

東山と木村は旧知の間柄だが、横道と顔を合わせるのはこの日が初めてのことだった。横道と東山の2人が押し入り、金庫が見つかった段階で木村が車で駆けつけ、現金を強取する計画だった。

木村は金庫を運搬するのに必要な車と、実行役の2人が機動的に移動できるようにするためのバイクを調達する役割だったが、当日までに盗難車を準備できず、結局は実家の車とバイクを使うことになった。

実行役は初対面

3人が鎌倉市内のファミレスで待機していると、指示役から具体的な住所が送られてきた。犯行の1時間ほど前のことだ。現場の下見なし、実行役は初対面、移動手段もアシがつくものを使い、逃走ルートといった緻密な計画などない。それでも男たちは2億円の金があると信じ、分け前の皮算用をし、凶悪な緊縛強盗へと向かった。

午後6時。夕焼けが照りつける海岸沿いの民家に2人が押し入った。鍵はかかっていなかった。家には事前の情報どおり初老の女性(当時75)が1人でいた。

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