高校国語「現代の国語」は教員泣かせ? 文章ジャンルで科目分けに賛否両論の訳 実践的なシチュエーションの再現難しく「困惑」

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「言語文化」では上代から現代までの文学作品を扱う。一方で、近現代の作品や、より感性や情緒の関わる作品については選択科目の「文学国語」がカバーする。

「『文学国語』を選択しない場合、共感力や豊かな想像力を育成する機会は少なくなると考えます。また近現代の文章には、現代に至るまでの社会問題を取り上げたものも多くあります。生徒の中には当事者がいる可能性もありますから、授業では道徳的配慮も必要です。『論理国語』の直接的で生々しい文章だと他人の事のように感じられるテーマも、文学のフィルターを通すと自分の事として考えやすくなり、時代背景や社会背景を踏まえた自然な理解を促すことができます。小説を読む意義は、単なる楽しさだけでなく、社会的な問題に触れて自分自身の生き方や考え方を見つめることもあるのです」

文章ジャンルより「資質・能力」を重視して

今回の再編に伴う変化は、いつ頃どんな形で表れるのだろうか。

「2022年度に入学した高校生が卒業して社会に出るタイミング、つまり2年後もしくは6年後から社会への影響が表れるでしょう。彼らはICTを活用した授業を受けていますし、学習指導要領でも情報処理・情報の比較検討に関するスキルが重視されています。入社後は即戦力となり、社員として優秀な人材となるでしょう。

しかし、処理した情報を扱うのはあくまで人間ですし、チームで仕事をする際はコミュニケーションが欠かせません。相手の情緒を理解して思いやる能力は、『言語文化』『文学国語』『古典探究』で育成されるのではないでしょうか。これらの科目を選択しなかった場合、どうなるのだろうという懸念もあります。もちろん、授業だけでなく地域活動や課外活動にも学びはあるはずですから、生徒には学校外でもいろいろな人と関わり、聞く、話すという経験を積んでほしいですね」

言葉や文章は単なるツールではなく、人の思いや文化、時代背景をも含むものだ。自分や社会と向き合うきっかけや、この世界を生きる武器にもなる。高校国語に関する議論では「文章ジャンル」が争点となりがちだが、いま一度、「生徒にどんな資質や能力を身に付けてほしいか」に立ち返る必要がありそうだ。

※本内容は日本学術振興会の「JSPS若手研究20K13999」の成果の一部です

(文:吉田渓、編集部 田堂友香子、注記のない写真:studio-sonic / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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