学校の「過酷な勤務実態」に危機感、GIGAスクール構想の下での校務DXの可能性 ICT導入してもラクにならない典型的な問題点

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そもそも、その業務や書類、手続きは必要か、書類はもっと簡素化・標準化できるのではないか、ユーザーフレンドリーなシステムやアプリになっているか、自治体のルールや慣習が能率を下げていないか、自治体内(教育委員会と学校、首長部局と教育委員会との間など)で連携は取れているかなどを診断し、改善していくことが必要だ。

教職員の負担軽減×教育・福祉の高度化を進める

さらに、今回の取りまとめは、校務の電子化や教職員の負担軽減にとどまらず、教育・学びの高度化や児童生徒の福祉の充実につなげていくことを狙っている。タイトルが「校務DX」となっており、サブタイトルが「教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して」となっていることにも表れている。

「校務DX」(あるいは「教育DX」などと呼んでもいい)が何を指すのかは議論の余地はあるし、はやり言葉で、大ざっぱな概念でくくるのも、煙に巻かれているような気がして、私は好きではない。前述したような問題を改善して、先生たちの仕事が多少効率的になるという程度では、DXとは呼べないだろう。

現状では児童生徒に関するさまざまな情報があちこちに分散管理されているため、一覧しにくい。例えば、テストの結果、児童生徒のアンケート結果、心の天気(その日の気分を天気記号で入力する)、欠席・遅刻の状況、検索ワードなど。さらには家庭環境に関する情報も学校と教育委員会は保有している。結局、さまざまなデータを照らし合わせて子どもを見取ったり、異変がないか考えたりすることがあまりないため、どちらかといえば個々の教職員の経験と勘による児童生徒支援や授業づくりが主流だろう。

この背景については、長くなるので詳細は省くが、学習系と校務系のデータが連携していないことや、現状の校務支援システムでは一覧管理できる機能がないことなどがある。もちろん、データだけで先入観を持って児童生徒に接することは副作用も大きいだろうから注意は必要だし、経験と勘が有効なときもある。だが、さまざまなデータを生かすことで、問題やSOSを早期に発見できるようになったり、児童生徒や保護者との面談の際に参照できたりすれば、教育活動と子どもの福祉の充実につながる。

とはいえ、DXとか教育・福祉の高度化などと言われても、超忙しい先生たちにとっては「理想はわかるが、ついていける気がしない」「またそのための業務が増えるのか」という感想を持つ人も多いであろう。今回の会議の報告だって、何%の教職員に知ってもらえているだろうか。

掛け声や専門家会議の報告だけでは現場はよくならない。今回述べたような問題解決を具体的に着実に進めて、先生たちがもっと仕事をラクに楽しくできるようにすることが先決だ。

(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)

執筆:教育研究家 妹尾昌俊
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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