また、どうしても自宅に仕事を持ち帰らざるをえないほど業務量が多い先生もいる。児童生徒のノートを大量に持ち帰ってコメント書きをしたり、教材作りなどをしている。しかし、これは二重の意味でハイリスクである。
1つはもちろん、情報漏洩のリスクだ。児童生徒情報などをUSBメモリーで持ち出して、紛失する事案がたびたび発生している。重要な文書を紙で持ち出して紛失してしまうこともある。
もう1つは、健康リスクだ。ほとんどの学校がタイムカードなどで勤務時間(在校等時間)を把握、管理しているが、ほとんどの自治体で自宅残業はノーカウントだ。というのも、持ち帰り仕事は正式には認めていないという教育委員会が多いので、建前上は、教員が勝手に持ち出して仕事をしていることになっている。

教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表
徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年に独立。全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱のほか、埼玉県、横浜市、高知県等)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁において、部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議の委員も務めた。Yahoo!ニュースオーサー、教育新聞特任解説委員。主な著書に『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』『教師崩壊』(ともにPHP新書)、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、『学校をおもしろくする思考法 卓越した企業の失敗と成功に学ぶ』『変わる学校、変わらない学校』(ともに学事出版)など多数。5人の子育て中
(写真は本人提供)
働き方改革の掛け声が強まる中、「時間外勤務が多くなると、校長や教育委員会からやたら声がかかり、指導を受けるので面倒」「産業医の面談を受けなさいと言われても、そんな時間もない」という先生たちの気持ちもわからないではない。だが、それで自宅残業が増えて働きすぎても、誰もモニタリングしていないのは、大きな問題だ。
企業の中には、パソコンの稼働時間などを従業員の健康管理、労務管理に活用している例も少なくないのに、学校と教育行政は、残業の「見えない化」と健康リスクの増大にあまりにも無関心だ。ではどうしたらいいのか?