「盛りすぎた日本株上昇論」が行き詰まりそうだ アメリカ株も景気や業績悪化による下落へ

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しかし、日本からの輸出数量指数は、2021年10月から前年同月比がプラスマイナスゼロを出たり入ったりしており、直近では2022年10月から今年1月まで4カ月連続のマイナス(しかも1月は前年同月比11.5%減)に陥っている。

輸出数量が円安でもむしろ減少している要因は、世界的な景気悪化による需要減退が勝りつつあるためだと考える。つまり、円安だからといって、手放しで日本の輸出株を買い上げてよい事態とは判断しがたい。加えて、前述のようにこれからアメリカ経済に対する悲観が台頭し、ドル安円高となって、「円安だから日本株を買ってよい」という主張は一段と論拠を失うだろう。

海外投資家は「日本企業の改革」になお疑問

もう1つの日本企業の経営改革期待については、どうだろうか。日本企業に対する海外投資家の不満としては、収益力の低さがよく指摘される。PBRは当該企業の解散価値に対する株価の比率を示すため、理論的にはPBRは1倍を割れないはずだ。しかしPBRが1倍を割れている銘柄は、東証プライム市場のおおむね半数程度に達している。

「PBR=PER(株価収益率)×ROE(自己資本利益率)」と分解できるが、PERは長期的な利益成長期待の高低などを反映する。するとPBRの低迷は、日本企業について「足元の収益率(ROE)が低く、長期的な成長期待(PER)にも乏しい」と市場で評価されていることになる。

こうした収益率の低さに対しては、もちろん以前から投資家が改善を求めてきたが、東京証券取引所も腰を上げた。1月30日に東証は「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の論点整理」という資料を公表したが、そこでは「継続的にPBRが1倍を割れている会社に対しては、改善に向けた方針や具体的な取組などの開示を求めていく」とされた。

こうした動向を踏まえると、素直な投資家は「これから日本企業が経営を改め、収益率を高めてPBRが1倍より高くなる形で、株価上昇が生じるはずだ」と期待するだろう。

しかし筆者は性格が邪悪なため、情報交換に応じてくれている海外投資家も性格が邪悪だ。

邪悪でなければなかなか投資業界では生き残れないのだが、そうした百戦錬磨な投資家たちは「東証に言われて収益率が高められるなら、とっくに高めているよね」「収益率の改善をもたらす経営改革は期待したいし、それができれば日本株は上がるだろうけど、できるかどうか疑問だ。改革できることを確認してから買ってもいいのでは」などと、冷静な声が多い。

「素直な投資家を煽ろう」との低PBR株への仕掛け的な買いは入っても、そうした買いが持続すると確信するのは時期尚早だと懸念している。

以上より、9日までの「株価が上がる要因探し大会」は今後行き詰まり、日本株は下落色を鮮明にしていくと見込む。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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