「盛りすぎた日本株上昇論」が行き詰まりそうだ アメリカ株も景気や業績悪化による下落へ

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さらに3月10日には2月の雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は前月比31.1万人増と、市場の事前予想の同20.5万人を上回ったが、1月分の同50.4万人増からは減速した。また失業率は、1月の3.4%から3.6%に悪化した。こうした雇用市場の不振を捉え、同統計の発表直後から長期金利は低下し始め、ドル相場も軟化した(一時は対円で1ドル=134.10円近辺まで下落)。

一方、アメリカの株価は、寄り付き後しばらくは不安定に上下動するにとどまっていた。だが、SVB(シリコンバレー銀行、IT新興企業向けの銀行)が破綻したこともあって、景気の先行きに対する懸念が急速に台頭し、株価下落が進んだ。

雇用や消費の悪化は、驚くには及ばない

こうした雇用関連統計が指し示す労働市場の悪化や、それがもたらすであろう今後の個人消費の減退は、当コラムの読者にとっては、別に驚きではないだろう。当コラムでは以前から、雇用市場の先行指標と見なされる「週当たり労働時間」や、派遣業雇用の軟調さ、消費関連企業の慎重な自社収益見通しなど、警戒要因を指摘してきたからだ。

とくに消費関連企業の見通しについては、前回のコラムでホーム・デポやウォルマートの2024年1月期予想値が市場の事前予想を下回ったことを挙げたが、その後も今月1日の決算発表では、百貨店のコールズが2023年1月期の決算実績が減収で最終利益は赤字、2024年1月期も減収の見通しとなっている。

またホームセンターのロウズも、既存店売上高は実績値も今期見通しも減収だ。消費の現場に近い各企業が先行きについて慎重であるという点は、重視すべきである。

加えて、「コロナ貯蓄」が底をつきかけていることも、消費に対する警戒要因だ。

2020年の新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、アメリカ政府は景気対策として、家計向けの補助金や失業保険の上乗せを行ってきた。一方で、家計はコロナ禍でしばらく存分な消費(外食、行楽、旅行、音楽・演劇・スポーツのライブ参加など)ができず、家計の手元には現金が積み上がっていた。そうした手持ちの現金が、最近は「コロナ貯蓄」と呼ばれている。その後、2022年初あたりからは、使い残して積み上がったコロナ貯蓄を取り崩す動きが強まり、それが個人消費を支えてきた。

しかし、そうして消費を支えてきたコロナ貯蓄が、乏しくなってきた。コロナ貯蓄の実額としては、連銀の試算によれば2021年9月末に2.28兆ドルにまで積み上がり、ピークに達したとされる。ドイツ銀行の分析では、そのコロナ貯蓄は2022年末には1.01兆ドルとピークの半分以下になっていて、2023年11月には完全になくなるとの予測だ。

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