全7回の特集『迫る物流危機 運送業の憂鬱』の第1回。荷物が運べなくなる「2024年問題」は近年指摘され続けてきた。そもそもなぜ問題が起きるのか、解決を難しくしている要因は何かを探る。
「大手は残業規制に対応できると言うが、それは下請けに回すから。下請けの中小は(法的に)だめだとわかっていても、運ばなければならない――」。中小の運送会社からは、あきらめにも似た声が聞こえてくる。
EC(電子商取引)関連の荷物が増え続ける一方、物流業界ではドライバー不足が年々深刻さを増す。そこに今度は「2024年問題」が立ちはだかる。
これまでドライバーには時間外労働時間の上限規制は適用されていなかったが、2024年度からは年間960時間の上限規制が導入される。あわせて実施される改善基準告示の改正により、年間の拘束時間の基準も3516時間から原則3300時間(最大3400時間)へと引き下げられる。
規制や基準の強化により、一段と人手不足に陥る可能性が高く、運送業界は文字通り「荷物が運べなくなる」危機に直面している。
大手各社はリレー方式の中継輸送や、2台分の荷物を運べる連結トラックの導入、鉄道の活用など対応を進める。業界団体や各省庁も対策を呼びかけてきたが、根本的な人手不足を解消できる見通しは立っていない。物流危機はなぜ起こり、なぜ改善が進まないのか。各種データから検証する。
ドライバー不足で地方の物流に影響必至
「このままでは2030年に全国の35%の荷物が“合法的に”運べなくなる」。今年1月、野村総合研究所が発表した推計は、物流業界の厳しい先行きを示すものだった。
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