中国が新型コロナウイルス禍に伴う渡航制限を解除したことで、中国人富裕層の海外移住の動きが加速している。こうした中国人が海外の不動産や資産を購入し、巨額の資本流出につながる可能性がある。
複数の移住コンサルタントがインタビューで明らかにしたところでは、ゼロコロナ政策が昨年12月に撤廃されて以来、多くの中国人富裕層が不動産のチェックや移住計画の最終確認のため海外に渡航し始めている。こうした中、金融市場を圧迫し得る資本流出に加え、頭脳流出が懸念されている。
中国共産党に盾突かない限り富を増やし続けられることが当たり前になっていた富裕層はこの2年間、習近平国家主席によるテクノロジー・不動産・教育業界の締め付けや、同氏が推進する「共同富裕」で動揺せざるを得なかった。富裕層向けアドバイザーは、昨年10月の共産党大会で習氏が支配体制を強化して以来、富裕層の懸念は増していると指摘した。
カナダの移民問題専門の法律事務所ソビロフスによると、カナダへの移民を目指す中国人顧客が急増している。同事務所のシニア弁護士、フェルーザ・ジャマロワ氏は「この6カ月間でうんざりしたのだろう。相談の予約が急増している。中国の顧客は現在、移住に前向きであり、できるだけ早期を希望している」と説明した。
ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏によれば、コロナ禍前は中国からの海外渡航者による資本逃避は年間1500億ドル(約19兆4000億円)前後だったが、今年は3年間海外旅行が実質禁止されていたこともあって増加する可能性が高い。
同氏は「中国は今年、巨額の資本流出に直面し、これが人民元と経常収支を圧迫する公算が大きい」とし、多くの人が現金を持ち出せない場合は今年の資本逃避は過去の年を上回らないかもしれないが、それでも労働力や生産性、成長に影響を及ぼし得ると指摘した。
クレディ・スイス・グループの昨年9月のリポートによれば、資産が5000万ドルを上回る超富裕層の人数で中国は3万2000人強と、米国に続き2位となっている。
中国人富裕層の海外移住は既に昨年から始まっている。投資移住コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズのデータ情報パートナーであるニュー・ワールド・ウェルスによると、2022年は約1万800人と、19年以来の多さとなった。世界ではロシアに次ぐ2位。
ヘンリー&パートナーズによれば、中国の規制撤廃後、中国人からの移住に関する問い合わせが撤廃前の4倍強に増加。コロナ禍初期は移住は少なかったが、22年に問い合わせが倍増した。
アジアの顧客への海外不動産販売を支援する不動産会社、ジュワイIQIによると、中国本土の買い手の問い合わせ件数は21年に26%、22年に11%それぞれ減少したが、今年に入って55%増加してその水準を維持しているという。
原題:Exodus of Wealthy Chinese Accelerates With End of Covid Zero(抜粋)
--取材協力:、、、、.
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著者:Bloomberg News
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