今こそ必要な「空想的社会主義者」の思想と実践 『社会主義前夜』著者の中嶋洋平氏に聞く

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同志社大学グローバル地域文化学部助教の中嶋洋平氏
中嶋洋平(なかしま・ようへい)/同志社大学グローバル地域文化学部助教、政治学博士。1980年生まれ。慶応大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学、フランス国立社会科学高等研究院政治研究系博士課程修了。著書に『サン=シモンとは何者か』、訳書に『市民の共同体――国民という近代的概念について』など。
19世紀初頭に活動したサン=シモン、オーウェン、フーリエは、世界史の教科書などでは「空想的社会主義者」として簡単に触れられることが多い。しかし彼らは、当時の社会状況で生じた労働問題や格差といった問題を改善しようと行動した社会企業家・社会プランナーだった。
社会主義前夜 ――サン=シモン、オーウェン、フーリエ (ちくま新書 1688)
『社会主義前夜 ――サン=シモン、オーウェン、フーリエ』(中嶋洋平 著/ちくま新書/968円/272ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──サン=シモンはじめ3人は、ただあれこれ考えている「空想・夢想」で終わった人ではまったくなく、「行動・実践」の人であることを知りました。

そのとおりです。革命による共産主義樹立の理論が科学的と称揚される中、資本主義の下で社会の改善を目指した3人の行動・実践が、「あなたたちの考えでは何も変えられない」と一方的に空想的と批判されただけ。彼らは実際に行動する思想家であり企業家であり労働者でした。

彼らが生きた19世紀は歴史の大転換期。産業革命、そしてフランス革命を契機とした市民革命により民主主義と資本主義が広まった時期です。

それに伴い、資本家と労働者、富裕層と貧困層という2つの身分が社会に出現しさまざまな問題が噴出します。2つの身分の固定化を避け、一方による一方への抑圧や搾取を拒否し、社会で共に生きる一員として両者を融和させるにはどうすればよいか。この問題に取り組んだ点で3人は共通しているといえるでしょう。

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