春節の民族大移動で農村部にコロナ急拡大の恐れ 農村部は住民の約4人に1人が60歳以上の高齢者
中国による昨年12月の突然の「ゼロコロナ政策」転換は、春節(旧正月)に数億人が2019年以降で初めて帰省することを意味する。大勢の人々の旅行で世界最大級の新型コロナウイルス感染の流行が加速し、中国の隅々にまで広がる恐れがある。
中国の農村部はこれまで何とか新型コロナ感染の流行を回避してきたが、出稼ぎ労働者や大学生から都市部のエリート層などの旅行者が感染力の強いオミクロン株を地方に持ち込む恐れがある。
中国の春節は世界最大の「民族大移動」が起こる時期として知られ、22日の春節を前に家族と再会するため中国東部海岸沿いの大都市から航空機や列車、バス、フェリーが多くの人々を乗せて内陸に向かっている。今年は新型コロナウイルスも運ばれる可能性があり、旅行者の大切な人たちが初めて感染リスクにさらされるかもしれない。
春節を挟んだ40日間の旅行者は今年、延べ21億人に上り、前年から倍増する見通し。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校フィールディング公衆衛生大学院のズオフェン・チャン疫学科長は、「旧正月を祝うための帰省には多くの喜びがあるが、それは多くの家族に悲劇をもたらす恐れがある」と話した。
中国の習近平国家主席は、連休を前に国内に向けて行ったビデオ演説で、新型コロナ関連の農村部での流行について言及し、地方での感染対策の取り組みについて特に懸念していると述べた。衛生問題の専門家は、このウイルスが医療インフラの乏しい地方の弱者を襲い、既に医療機関や火葬場を圧迫し大都市を機能不全に陥れた大流行よりもさらに悪い結果を招きかねないと不安を感じている。
チャン氏は中国の農村部が特にコロナ禍の悪影響を受けやすいと言う。住民の約4人に1人が60歳以上の高齢者で、このグループはワクチン接種が比較的少なく、合併症を起こす可能性が高い。多くの人々はこのウイルスをよく知らず、感染リスクにさらされたこともない上に自然免疫もない。
一方で、遠隔地の医療資源は乏しい。中国全体では人口1000人当たりの医師数は2.9人、看護師数は3.3人であるのに対し、農村部では医師と看護師を合わせても1.62人しかいない。経験豊富な医師や人工呼吸器などの機器を備えた集中治療室は何マイルも離れていることが多い。
大都市への打撃
英調査会社エアフィニティーは中国の春節期間中の人々の大移動を踏まえ、新型コロナウイルス感染で死亡する人数のピーク予想を1日当たり3万6000人とし、従来の1万1000人から引き上げた。当初は旧正月の前と後の2回の感染急増を予想していたが、現在は、制限のない春節旅行で2つの波が巨大な波に統合する可能性が高いとみている。
その結果、「今後2週間は中国の医療制度に大きな負担がかかり」、「多くの治療可能な患者が、病院のあまりの混雑と不十分な治療のために死亡する恐れがある」とエアフィニティーの分析ディレクター、マット・リンレイ氏は指摘した。
このウイルスは中国の巨大都市や定住率の高い地域で急拡大している。中国で最も人口の多い省の一つである河南省は、住民の90%近くが感染していると発表。首都北京や金融センターの上海、南部の貿易の中心地である広州などの一級都市はいずれも感染がピークに達したとしている。
中国の人口14億人のうち9億人以上が感染したと予測する研究者もいるほど、突然の感染急拡大で解熱剤や経口抗ウイルス薬「Paxlovid(パキロビッド)」などの薬品が持続的に不足している。ただ、農村部での流行の実態は分かりにくいかもしれない。
原題:Covid Catastrophe Looms for China’s New Year Travelers(抜粋)
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著者:Bloomberg News
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