文化人類学者が熱帯の社会に潜む「不穏」に迫る 『不穏な熱帯 人間〈以前〉と〈以後〉の人類学』書評

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『不穏な熱帯 人間〈以前〉と〈以後〉の人類学』里見龍樹 著
不穏な熱帯 人間〈以前〉と〈以後〉の人類学(里見龍樹 著/河出書房新社/2970円/450ページ)
[著者プロフィル] 里見龍樹(さとみ・りゅうじゅ)/早稲田大学人間科学学術院准教授。1980年生まれ。専攻は文化人類学、メラネシア民族誌。著書に『「海に住まうこと」の民族誌』、共訳書にストラザーン『部分的つながり』、デ・カストロ『インディオの気まぐれな魂』など。

タイトルどおりに内容も「不穏」な本だ。

文化人類学者である著者は、2011年夏にソロモン諸島のマライタ島でフィールドワークを行った。本書はその記録を紹介しながら、現地住民の習慣や生活、文化を理解・記述することの意味について、思索を展開する。

調査期間の最後には、現地の人々がコミュニティーの一体性を確認する大規模な祭典が予定されているのだが、そこに至る過程で続発する不幸や人々の前に現れるさまざまな謎は、読者に「何かが起きる」感覚を与え続ける。著者はそれら一連の出来事について、文化人類学の理論的な文脈を参照しつつ、ともすれば調査を行う自分自身の立ち位置を掘り崩しかねないような鋭い考察を重ねていく。

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