女性の「理系嫌い」は日本の社会風土の産物だ 『なぜ理系に女性が少ないのか』横山広美氏に聞く

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東京大学教授の横山広美氏
横山広美(よこやま・ひろみ)/東京大学教授。1975年生まれ。博士(理学)。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長・教授。東京理科大学で博士号を取得後、専門を物理学から科学技術社会論に変更。AI倫理や大規模科学技術の政策課題など、科学と社会の問題について研究している。(撮影:梅谷秀司)
日本の大学の理系学部は、他国と比べ学生の女性比率が非常に低い。その背景には、「優秀さは男性のものであり女性には不要である」という「社会風土」があると本書は指摘する。

日本の社会風土が女性の理系進学にも影響

なぜ理系に女性が少ないのか (幻冬舎新書 674)
『なぜ理系に女性が少ないのか (幻冬舎新書 674)』(横山広美 著/幻冬舎新書/1034円/234ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──日本では「女の子は数学が苦手」と、昔からいわれてきました。

今日では多くの研究者が、理数系の学問における能力の違いは男女差ではなく個人差によるものだと考えています。国際的な学力テストの結果も、日本の15歳の成績は男女でほぼ同等です。けれど大学進学の段階になると、成績の差をはるかに超えて日本の女性は理系分野、とくに数学・物理学や工学を選ばない。いったいなぜなのか。

この問題に、2017年から3年間、男女3人ずつ計6人のチームで取り組んだのが、本書の基になった研究プロジェクトです。

研究では「日本の社会風土」を中核としました。海外の先行研究では、理工系分野で学ぶ女性が少ない理由として、①分野の男性的カルチャー、②幼少時の経験、③自己効力感(自分は目標を達成できるという自信)の男女差の3つが挙げられていて、この枠組みは私たちにとっても有益でした。

でも、日本の現状はそれだけでは説明できないようにも思える。男女の不平等が多く潜んでいる日本の社会風土が、女性の理系進学にも影響しているのではないか、と。そこで4つ目に加えたのが、「性差別についての社会風土」です。データを統計的に分析することで、この社会風土を客観的に議論しようと努めました。

──文系・理系にまつわる事柄は従来、印象論で語られがちでした。

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