ドイツ「クーデタ未遂事件」の深刻な背景事情 ロシアが裏で関与していたかも捜査の焦点に
12月にドイツで発覚した大規模なクーデタ未遂事件。合理的で自由な先進民主主義国とみられていた同国でなぜ、このような事件が起きたのか。
ドイツで大規模なクーデター未遂事件が12月に発覚し、25人が逮捕された。武装グループがベルリンの下院議事堂を襲撃し、新政府を樹立する計画だった。
この事件は、日本でも関心を引いているようだ。普段は特段ドイツに関心がなさそうな数人の知り合いから、「ドイツのクーデター未遂事件っていったい何ですか」と聞かれた。
ドイツというと先進民主主義国家としてのイメージが日本では支配的だ。そのため、政府転覆計画そのものが驚きだし、首謀者とされる男(71)が貴族出身で、時代がかった「ハインリッヒ13世ロイス公」という名前であることも、一層興味を引いたのではないか。
ドイツ社会の底に淀む「澱」
ドイツに9年半駐在し、その後もドイツ情勢を追いかけている私は、ドイツ人の持つ非合理的な側面や、社会の主流派に対し、少数派が抱く強いルサンチマン(怨念)について何度も指摘してきた。だが、今回の大規模なクーデタ計画には正直言って驚いた。
荒唐無稽と一笑に付すにしては、武器を大量に準備して射撃訓練も行い、具体的な計画があったのだから、事は深刻である。表面的には自由民主主義の価値が徹底しているように見えながら、ドイツ社会の底には黒い澱のようなものが淀んでいる。
日本でもかなり詳細な内容が報じられているが、事件の経緯について、ドイツの公共放送ARDやシュピーゲル誌の報道などをもとにまとめると、次の通りである。
ドイツ連邦検察庁が3000人を投入し、130カ所の一斉検挙、家宅捜索に踏み切ったのは12月7日早朝。極右勢力メンバー22人、ロシア人1人を含む支援者3人を拘束した。戦後ドイツ警察史でも最も大規模な捜査で、大量の武器と13万ユーロ(約1800万円)の現金も押収された。
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