ドイツ・エネルギー危機で「原発稼働延長」の深刻 高まる稼働延長の世論、ショルツ政権内も二分
原子力発電所の廃止を掲げるドイツを、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機が襲っている。原発稼働延長はドイツ政治の一大争点になっている。
ロシアによるウクライナ侵略が長期化する中、ドイツではこの冬のエネルギー逼迫が差し迫った問題になっている。
ロシアは点検作業の遅れを理由にしながら、恐らくは対ロシア制裁を続けるドイツへの対抗措置として、ガスパイプライン「ノルドストリーム1」によるガス供給を滞らせている。
世界がエネルギー価格の高騰と供給不足の懸念に苦しむ中、ドイツ国内では原子力発電所の全廃期限が年末に迫っている。ガス発電所の燃料不足で、大規模なブラックアウト(全域停電)も懸念されており、原発稼働延長の是非が議論されているのは当然だろう。
福島事故後、段階的に原発を廃止
2011年3月の福島第一原発事故を受けて、メルケル前政権は2022年末までの脱原発を定めた「原子力法」を制定した。この約10年間で段階的に原発を廃止してきたが、稼働中の原発として残っているのはエムスラント(ドイツ北部のニーダーザクセン州)、イーザル2(同南部のバイエルン州)、ネッカーヴェストハイム2(同南部のバーデン・ヴュルテンベルク州)の3基だ。
稼働延長の是非を判断するために、ドイツ経済・気候省は、この冬の電力需給がどうなるかを分析するストレステストを送電事業者に委託し、9月5日にその結果が公表された。
ストレステストを受けて記者会見をしたハーベック経済・気候相(緑の党)は、「危機的状況はほとんどありえないが、まったくないとは言えない」としたうえで、3基中1基は予定通り年末に廃棄とし、残り2基を緊急用の予備電源として2023年4月半ばまで待機状態にする方針を表明した。
状況によっては2基の原発を使い続けるか、あるいは再稼働させる可能性もあるが、新たに燃料を装填することはなく、4月中旬で待機状態も終わるという。
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