欧州エネルギー危機に「ライン川渇水」の追い打ち 「大動脈」の機能不全でドイツ経済は窮地に
脱原発、脱炭素に大きく舵を切ったドイツ。だが、ロシア・ウクライナ戦争でエネルギー危機に陥った。そこへ、猛暑による“大動脈”の機能不全が追い打ちをかけている。
ユーロ圏が深刻なエネルギー危機に見舞われていることは周知のとおりである。域内のインフレ懸念は「コストプッシュなので一時的」という評価を通り越してECB(欧州中央銀行)の政策運営にもはっきりと修正を強いており、7月にはマイナス金利政策の解除に至った。
ロシアへのエネルギー依存度が相対的に高いユーロ圏は他国・地域に比べてもエネルギー危機への警戒感が強い。これは欧州委員会やECBが「ロシアからのエネルギー供給が途絶えた場合」を念頭に別の予測シナリオを用意していることにも表れている。
ライン川の水位低下という新たな危機
しかし、ここにきてさらに域内のエネルギー事情を悪化させる材料が浮上している。それは「ライン川の水位低下」だ。
ドイツ水上輸送の要であるライン川の水位は猛暑による渇水で低下しており、今後、船舶の航行不能となる水準付近まで低下するとの見通しが示されている。
ライン川の重要性はドイツに限らず、大陸欧州全体に関わる話である。ライン川はスイス山岳地帯から始まり、ドイツの主要都市を従え、最終的には欧州最大の港湾都市ロッテルダム(オランダ)までつながり、最後は外洋(北海)へ注ぐ。
燃料(石炭や鉄鉱石など)、化学製品、自動車部品など重要な交易財を運ぶ役割を果たしている。陸上輸送に比べて大量の運搬を可能にするルートであり、文字どおり「欧州の大動脈」と形容できる重要なライフラインである。
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