英国の展望車「デボン・ベル」、波乱万丈の1世紀 誕生時は「救急車」、米国巡業後に帰国できず

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
Devon Belle pullman observation car
側面の上半分がガラス張りの「デボン・ベル」号展望車14号(筆者撮影)
この記事の画像を見る(22枚)

鉄道発祥の国・イギリスでは、世界で最初に蒸気機関車を使用した公共鉄道であるストックトン&ダーリントン鉄道が1825年に走り出してからもうすぐ200年が経とうとしている。そんな長い歴史を反映し、イギリスには廃止された路線などで古い客車や機関車による列車を走らせている保存鉄道が多数存在する。

2023年2月には蒸気機関車(SL)の名機とされる「フライング・スコッツマン号」が誕生100周年を迎えるが、客車もこれに負けず劣らず、保存鉄道では製造から100年を超える車両が美しい状態で活躍している。その中でも貴重な、まさに波乱万丈といえる数奇な運命をたどった展望車「デボン・ベル(Devon Belle)」号を紹介したい。

最初は傷病者を運ぶ「救急車」だった

「デボン・ベル」号は、2022年10月に蒸気機関車「フライング・スコッツマン」号走行展示などを行った、イングランド南部ドーセット州のスワネージ(Swanage)鉄道が目玉として保有・運行する客車で、正式にはプルマン展望車14号と呼ばれる。

デボン・ベルはロンドンとイングランド南部デボン州を結ぶ列車の名称で、その最後尾に連結されて活躍したことからこの名で知られている。

だが、最初から展望車だったのではない。当初は、1918年に第1次大戦中の傷病者を輸送する「救急車」として製造された。その後1921年にプルマンカー(車内サービスなどのある高級座席車)に改造され、さらに1937年にはバー車になった。デボン・ベル号の展望車としてデビューしたのは、実に救急車として登場してから約30年を経た第2次大戦後の1947年だ。

次ページ美しい海岸線を走ったのもつかの間…
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事