国家転覆計画も…ドイツ悩ます「極右団体」の脅威 貴族の子孫や警察官、現役兵士など25人を逮捕
「計画はエスカレートしていっている。彼らはベルリンに進撃し、連邦政府の一部を破壊する計画を持っていた」と、複数の家宅捜索が行われたテューリンゲン州の国内情報部長であるステファン・クラマーは語った。「政府転覆を目論む彼らは、死者が出るのもいとわない」。
差し迫った脅威だけでなく、今回の家宅捜索の規模や検察当局が説明した野心的な計画は、ドイツの中核機関(議会、司法、地方警察、州警察、そして最も精鋭な軍隊まで)に過激主義に対する脆弱性が根強く残っていることを示しており、ドイツ当局も近年、これを根絶するのに苦労してきた。
27人の容疑者を捜査中
水曜日に家宅捜索された場所のひとつは、軍の兵舎であった。各地で拘束されたのは、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のメンバーでドイツ連邦議会議員を務めた人物、ドイツの王子、同党の計画を支持したとされるロシア人などだ。連邦検察は、このほか計27人の容疑者を捜査していると発表した。
逮捕された2人はドイツ国外――1人はオーストリアで、もう1人はイタリアで――拘束された。
検察当局によると、グループは昨年、陰謀グループ「Qアノン」や、第2次世界大戦後のドイツ共和国が主権国家ではなく、戦勝連合国によって設立された企業であると考える「Reichsbürger(ライヒスビュルガー)」というドイツの右派陰謀グループの思想に影響を受けて結成されたという。
長年、帝国市民はドイツの極右団体の中ではほとんど余興のようなものと見られていた。同団体は奇妙な陰謀論を持つ約2万人の緩く分散したネットワークで構成されている。
ベルリン自由大学の政治学者で、右翼過激派を研究しているハジョ・フンケ氏は、「彼らのうち右翼過激派はごく一部だとずっと信じられてきた」と話す。「それは常に間違っていた。そして今、この危険を軽視してきたことの間違いを目の当たりにしている」。
ライヒスビュルガーは近年、特にパンデミック以降、その信奉者と考え方がQアノンの活動における陰謀論と結びつき、特に、彼らがいうところの、政府を動かす腐敗したエリートたちの影の組織、いわゆる「ディープ・ステート」からの脅威を見て、勢力を増してきた。
検察の声明によると、メンバーが共有する確信のひとつは、「ドイツは現在、いわゆるディープ・ステートのメンバーによって支配されており、打倒する必要がある」というものだった。
検察によると、同団体は計画を実行するために、警察や軍隊に積極的に採用しようとする軍事部門と、ベルリンに設置することを意図した影の政府のようなものである評議会と呼ばれる政治部門を形成していたという。