運動嫌いを増やしてしまう学校の体育の常識、「全員できる教」が大問題の訳 「体育嫌い」なくす不親切教師的体育指導の勧め

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松尾英明(まつお・ひであき)
千葉県公立小学校教員 「自治的学級づくり」を中心テーマに千葉大附属小などを経て研究し、現職。単行本や雑誌の執筆のほか、全国で教員や保護者に向けたセミナーや研修会講師、講話などを行っている。学級づくり修養会「HOPE」主宰。ブログ「教師の寺子屋」主催。近著に『不親切教師のススメ』(さくら社)
(写真:松尾氏提供)

学習指導要領には、最低限の到達目標が示されている。例えば5・6年生の「イ 鉄棒運動」から一部抜粋すると「基本的な上がり技や支持回転技,下り技に取り組み,それぞれについて自己の能力に適した技が安定してできるようにするとともに,その発展技をできるようにする」といったものである。見てわかるとおり、特定の技そのものの習得は到達目標には書かれていない。「自己の能力に適した技」というだけだ。

例えば体育で「できる」の代名詞ともいえる「逆上がり」がどう示されているか見てみる。「B 器械運動」という大カテゴリー内に「イ 鉄棒運動」という中カテゴリーがある。その中に[上がり技の例示]という小カテゴリーがあり、その中に4つ示されている技の中の最後の1つ、という程度の位置づけである。つまり、本来逆上がりそのものができるかどうかは、問われないのだ。

そこで、鉄棒運動の指導の際には、学習指導要領に示されている「基本的な上がり技や支持回転技,下り技に取り組み」と「自己の能力に適した技」に注目する。要は、鉄棒に上がって回って下りればいいのである。上がれなければ、まずぶら下がるところから始めればいい。その中で、技はその子どもに合ったものを選択すればいい。繰り返すが、「選択」がこれからの体育のキーワードである。

体育では「できる」以外の目標を持つこと。学習指導要領には、それがきちんと示されている。親切にあれこれできるようにさせるよりも、多少不親切でも子どもの選択への自己決定を尊重する姿勢を持つようにしたい。

(注記のない写真:yanmo / PIXTA)

執筆:千葉県公立小学校教員 松尾英明
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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