立て続けに5件、日立「大型鉄道案件」受注の死角 1カ月間に各国で契約、海外売上比率8割だが…
オンタリオ州では、2019年に日立が参加する別のコンソーシアムが総額46億カナダドル(約4830億円)でLRT新規路線の設計・建設、運営、保守などを受注している。今回のプロジェクトと合わせ、「カナダにおける日立のプレゼンスが強固になる」と同社は期待する。
海外での新規受注はまだ止まらない。11月22日には、やはり日立がリーダーを務めるコンソーシアムが、旧イタリア国鉄系の鉄道インフラ保有・管理会社RFIと最新のデジタル鉄道制御システムの設計・設置契約を締結したと発表した。欧州鉄道交通管理システム(ERTMS)という欧州域内で国境を越えた相互運用が可能となる信号システムをイタリア北中部の1885kmに導入するもので、うち日立受注分の契約額は8億6700万ユーロ(約1260億円)。
これらの受注の合計額は1兆円を大きく超える。むろん、小規模の案件まで事細かに受注成立が発表されるわけではないし、取引先の意向次第では受注の決定や内の詳細を発表しないものもあるという。判明分だけでも日立にとってはトータルで巨額の売り上げとなる。
さらに契約額は未公表だが、11月29日にはフランス国鉄とユーロスター社向けにデジタル鉄道制御システムの導入契約を発表した。フランスの高速鉄道TGVはイタリアやスイスに乗り入れており、ユーロスター社が運営する高速鉄道のユーロスターやタリスもイギリス、フランス、ベルギーといった国際運行を行う。現在、欧州各国ではERTMSの導入が進んでいるため、列車に搭載しているフランス国内の高速鉄道向けの信号システムとERTMSを統合した信号システムをアップグレードして、将来の円滑な国際間運行に備える。
大型案件が11月に重なった
11月以前の動きはどうだったかというと、日立の日本語ホームページを見る限り、鉄道関連の大型新規受注の発表は2022年3月にRFIから受注したERTMSの設計・納入案件まで遡る。「これまで世界各地でさまざまな案件の受注活動に取り組んできたが、その成果の発表がたまたま11月に重なった」と日立の広報担当者は話す。
3月以前であれば、2021年12月にはアルストムと共同受注したイギリスの高速鉄道「HS2」向け車両製造および保守案件がある。契約金額は19億7000万ポンド(約3280億円、1ポンド=166.6円で計算)。さらに遡ると3月に受注したワシントン地下鉄向け新型車両256両の製造案件がある。契約金額は最大22億ドル(約3075億円、1ドル=139.8円で計算)だ。なお、ワシントン地下鉄向け車両では、製造拠点としてメリーランド州に新たに工場が建設される。10月18日に鍬入れ式が行われた。完成は2024年度。
11月に受注した5案件の内容を比較すると、国別ではイタリアが2件、フランス1件、カナダ1件、フィリピン1件となり、特定の地域に集中することなく欧州、北米、アジアとバランスが取れている。また、種類別でも4日発表分は車両、17日は信号システム、電化・通信システム、およびあらゆる範囲におよぶフルターンキー契約、22日と29日は信号システムとやはりバランスが取れている。
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