情報端末で自殺リスクや精神不調を可視化、学校導入広がる「RAMPS」とは? 中高生の回答「約6割にうつ症状」見られた年も

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2022年10月14日に改訂された政府の「自殺総合対策大綱」では、重点施策の1つとして、増加傾向にある子ども・若者の自殺対策をさらに強化することが盛り込まれた。文部科学省は、自殺リスクの早期発見や見守りに当たり、GIGAスクール構想下で配付した1人1台端末の活用も促している。こうした中、すでに18年から導入する学校が増えつつあるICTツールが、自殺リスクや精神不調を可視化する「RAMPS」というシステムだ。開発者の一人である、東京大学相談支援研究開発センター特任助教の北川裕子氏に開発の背景や成果について聞いた。

追い詰められている子ほど、つらい気持ちを言葉にできない

現在、全国74校の中学校・高等学校で採用されているRAMPS(Risk Assessment of Mental Physical Status:ランプス)。情報端末を通じて得られた質問への回答から精神不調や自殺リスクを評価して可視化し、必要なケアや支援に役立てるクラウドシステムだ。ウェブ上で利用できるスクリーニング・アセスメント・ツールなので、どの学校の情報端末でも使える。

開発者の北川裕子氏は、RAMPSを開発した理由について次のように語る。

「死にたいと考えるくらい追い詰められている子ほど、つらい気持ちを言葉にしたり、助けてというサインを発信したりできずにいます。周りの大人も様子がおかしいと思っても、どこまで踏み込んでいいのかためらいがちです。そういう中で子どもたちのSOSが見過ごされ、自死という手段で命が奪われている現状があると思いました。だから子どもにとっては言いたいことを助け、大人にとっては聞くことを助けるツールが必要だと考えたのです」

北川 裕子(きたがわ・ゆうこ)
東京大学相談支援研究開発センター特任助教
2017年に東京大学大学院教育学研究科身体教育学コース博士課程を修了・博士号取得、日本学術振興会特別研究員PDとして、帝京大学医学部精神神経科学講座博士研究員となる。20年帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座助教、21年より現職。子ども・若者の自殺予防に係る研究に従事。RAMPS(ランプス)の研究・開発、学校での実践を続けている

北川氏は、大学院時代の2015年に、指導教授の佐々木司氏の下でRAMPSの共同研究を開始。いくつかの学校の協力を得て試験実施をし、養護教諭や生徒たちに意見をもらいながら改良を進めていった。

そして18年から本格的な運用を始め、新潟県を皮切りに、長野県、神奈川県清川村など自治体での導入が拡大。一部の学校でRAMPSを活用していた東京都も、22年度内より順次、導入校を拡大する予定だ。システムの利用料として諸経費と生徒1人当たり年間200円がかかるが、学校が独自の判断で導入することもある。

RAMPSを利用する場所は主に保健室で、「こころとからだの健康アンケート」として実施しているが、健康診断やリモートでの実施など活用シーンは広がっている。

「コロナ禍での臨時休校の際に、ある学校からリモートでRAMPSによる精神不調スクリーニングを実施したいというお申し出がありました。また、健康診断で心に関する検査項目として使いたい、不登校の生徒へアプローチするきっかけにしたいなどのご要望も自治体などから寄せられました。こうしたニーズから、今は導入校の実情に応じて、保健室、一斉健診、個別健診といった3つの方法を自由に組み合わせてご利用いただけるようにしています」

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