日本の子ども、幸福度調査「世界ワースト2位」隠れた真の問題点とは? 今、考えたい「学力偏重」と「高校生以上の貧困」

「幸福度が低い」=「感情的な不幸」とは限らない
──「レポートカード16 子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」※1で日本は総合順位が38カ国の中で20位、精神的幸福度はワースト2位となっています。この結果から、どんなことが見えてくるのでしょうか。
最初に申し上げておきたいのは、「『幸福度』という言葉に惑わされないでください」ということです。原文で使われていた「ウェルビーイング」を日本語に翻訳した際に「幸福度」という言葉になったのです。ウェルビーイングとは、子どもの生活水準や心身の健康など、子どもの状況全体を表しています。
──「幸福度が低い」=「感情的な不幸」とは限らないということですね。では、精神的幸福度についてもう少し詳しく教えてください。
「レポートカード16」では、「生活満足度が高い15歳の割合」と「15〜19歳の自殺率」という2つの指標を基に精神的幸福度の順位づけがなされています。ただし、これは文化的に差が出るところで、生活水準が低くても多くの子どもがハッピーだと答える国もありますし、そこそこの生活水準の子どもが満足していないと答えていたりします。
日本の場合、「生活満足度が高い15歳の割合」は、全体の62%、多くの子どもが満足しているわけではありませんが、一方で40%近い子どもが満足していると答えています。しかし、この生活満足度以上に問題だと思うのが、「15〜19歳の自殺率」の高さです。日本では子どものうつも多い。精神的幸福度の国別順位だけを見てただ問題視するよりも、日本の中でどういった状況の子どもが自殺やうつになる傾向があるのか、そこを見て対策を打つべきと思います。
──なるほど。それでは、どういった状況の子どもが追い込まれやすい傾向にあるのでしょうか。
「レポートカード16」のデータではありませんが、この年齢の子どもの生活の満足度については、自己肯定感や友達関係が大きく関係します。そして、自己肯定感が学校の成績に大きく左右されるのは日本的な特徴ともいえます。もちろん、学力が高くなくても自己肯定感が下がらない子どももいます。サッカーが得意とか、絵が上手だとか、友達がたくさんいるとか。そうした多様な子どもが多様なやり方で自己肯定感を高めることができるといいのですが、日本はどうしても、勉強ができるかどうかということに左右されてしまう。学力重視・学力偏重の傾向は指摘すべき点だと思いますね。そして、学力や友達関係が悪くなる1つの大きな要因が経済的な格差です。
※1 ユニセフ「レポートカード16 子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」
「格差と負の連鎖」を生む貧困問題
──自己肯定感と経済的格差の関係についてもう少し詳しく教えてください。
学力や肥満などは、親の所得と関係があることがわかっています。いじめや不登校も、親の所得が低いほど増える傾向にあります。そこからヤングケアラーや、児童虐待という問題が起こる可能性も高くなります。
今は、学力だけでなく、考える力や生きる力などが求められ、社会の中である一定の、子どもの望ましい像が蔓延しているといえるでしょう。親も「勉強だけでなく、いろいろな体験もさせないといけない」と毎日お稽古事をさせるなど、子どもに多大の投資をしないといけないような風潮がありますよね。そういった風潮が格差を生み、貧困の連鎖を生むのは当然といえます。