日本の子ども、幸福度調査「世界ワースト2位」隠れた真の問題点とは? 今、考えたい「学力偏重」と「高校生以上の貧困」
日本の子どもの貧困率は現在、13.5%※2となっています。統計を取り始めた1985年の10.9%から徐々に上昇し、最も高かった2012年の16.3%に比べると、下がってはきています。しかし、このデータは18年の13.5%が最新であり、20年以降のデータはまだ出ていません。
※2 厚生労働省 政府統計「2019年 国民生活基礎調査の概況」
──20年以降、コロナ禍の影響は子どもの貧困問題にどんな影響を与えているのでしょうか。
親の収入減など経済的な影響ももちろんありますが、度重なる休校による子どもの生活や健康上の変化、例えば友達に会えなくて寂しいとか、学力の不安、ゲーム依存、体力不足、肥満率の上昇はすでに表れています。児童虐待などの増加も指摘されています。
このようにコロナ禍の休校は、子どもの生活上のあらゆる面に影響を与えましたが、所得が低い家庭の子どものほうがインパクトは大きかったといえます。所得が高い層なら休校の分の勉強を家で補完できますし、オンライン授業にも対応できたでしょう。小さな子どもを家で1人にさせられないという問題もありますが、所得が高い層では親が家にいることができます。
また、休校による運動不足も、所得が高い層であれば、何とかできたでしょう。しかし、そういったことができないご家庭があります。コロナ禍で、より子どもの間の学力格差、体力格差、情緒や不安感の格差が広まったのではないでしょうか。
──子どもの年齢と、子どもの貧困率は関係があるのでしょうか?
乳幼児より小学生、小学生より中学生、中学生より高校生と、子どもの年齢が高いほうが、子どもの貧困率が高いですね。要因はいくつかありますが、その一つが子どもを持つ年齢が遅くなったこと。とくに男性は30代以上で子どもを持つ方が増えています。子どもが小さいうちは経済的なインパクトは小さいですが、成長するにつれて大きくなっていきます。50代は正社員なら最も所得が高い世代ですが、非正規雇用では厳しくなり、男性の自殺率も高くなります。
子どもの年齢が高いほどひとり親世帯も増えます。というのも、子どもの年齢が高いということは親の結婚年数も長くなるからです。また、15歳は一つの境目です。この年齢は経済格差が大きくなっていくタイミングですが、この年齢以上の子どもへの支援が少ない。日本では児童手当は中学校卒業まで※3ですし、市区町村による子ども医療費助成制度も長くて中学校卒業までです。高校無償化で授業料がなくなっても、食費や通学費、携帯電話料金など、子どもにかかるコストはむしろ大きくなります。
昔は中卒・高卒で就職し、稼ぐ側に回る子も多くいましたが、今はこの年齢で稼ぐ側になる子は少ないのが現状です。大学進学率が高まるのはいいことですが、家計に無理をして大学進学をするケースもあるでしょう。卒業後に相応の収入が得られればいいのですが、非正規雇用となって借金だけが残ることもあります。
※3 内閣府 児童手当制度
学力偏重の社会のあり方も変えるべき
──日本の子どもの精神的幸福度を上げるためには、どんなことが必要でしょうか。
貧困が危険因子であるのは確かですが、もちろんそれだけではありません。日本では親も子どもも、「勉強ができていい仕事に就かないと非正規雇用になって不幸な人生が待っている」と恐れています。貧困とまではいかない家庭の子どもでも、「テストの成績が下がった。将来は非正規雇用になるのかな」とか、「将来、自分たちの世代は年金もなくて政府も破綻する」といった未来に対するネガティブピクチャーを植え付けられています。
そのため、どの階層の子どもであっても、「遊ぶことが許されない」といった風潮がありますね。精神的な面で言うのであれば、学力偏重を変えることが必要だと思います。例えば、通信簿をなくした小学校もあり、すばらしい取り組みだと思います。