日本の子ども、幸福度調査「世界ワースト2位」隠れた真の問題点とは? 今、考えたい「学力偏重」と「高校生以上の貧困」
しかし、小学校でなくしても中学校では通信簿がありますし、高校受験や大学受験で評価されます。それを考えると、根本的な大学入試改革が必要でしょう。子どもを評価するその風潮を変え、多様な人材、多様なよさが評価され、報われるような社会になれば救われるのではないでしょうか。
──行政の支援として期待されることは?
先ほど申し上げたとおり、子どもへの支援は15歳を境に薄くなりますが、その拡充は財政との兼ね合いもあります。貧困を何とかするためには財源がないといけません。政策上、日本の最も大きな制約は財政難で、しかも新型コロナ対策もあり、財政はますます悪化しています。そんな中で、どういった支援が不可欠なのか、どこは削れるのか、誰が負担増を引き受けるのか国民的な議論が必要です。
では、子どもへの支援では何が必要なのでしょうか。まず、経済的に厳しい子どもの生活を守る措置として、学校給食や医療費の無償化を高校生まで広げてほしいです。また、貧困に対する支援として無料の学習支援などさまざまな動きがありますが、塾に行かないと点数が取れない試験のやり方や、学力偏重の風潮が変わらない限り、根本的な状況は変わらないでしょう。
だからこそ、国公立の受験方法を変えるといったことも同時に行うべきではないでしょうか。お金がかかる改革だけでなく、社会のあり方を考えていく必要があると思います。
──これからの時代を生きていくうえで、子どもにはどんな力が求められると思いますか?
子どもが、自分の好きなことを自由にできる環境を整えることが重要です。これは、経済的に厳しい家庭のお子さんが、経済的な理由によって進学や部活動などといったことを諦めてしまうことを解消するということもありますし、経済的に余裕のある家庭のお子さんでも、受験勉強のために遊ぶ時間がなくなる、スポーツができなくなる、自由時間がなくなるといったことを減らすことも含みます。子どもが一人の人間として、子ども自身の考えや意見が尊重され、その子の人生に反映される社会を大人は用意するべきです。

東京都立大学 人文社会学部/人文科学研究科 教授。東京都立大学 子ども・若者貧困研究センター センター長。海外経済協力基金、国立社会保障・人口問題研究所などの勤務を経て現職。厚生労働省社会保障審議会臨時委員(生活保護基準部会)。著書に『子どもの貧困:日本の不公平を考える』『子どもの貧困Ⅱ──解決策を考える』(ともに岩波書店)ほか
(写真:阿部氏提供)
(文:吉田渓、表記のない写真:AK / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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