円安で稼ぎ時「越境EC」日本企業が知らない"弱み" アリババ責任者が日本企業の強みや改善点語る

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足元では円安も追い風になっている。越境ECを支援するBEENOSグループが今年7月に越境ECを利用する外国人消費者約1900人を対象に実施した調査によると、「円安によって、日本の越境ECで購入する頻度や1回あたりの使用金額のどちらか、あるいは両方が増えた」と回答した人が63%に上った。

同調査の対象に中国人消費者は含まれていないが、アリババジャパンは、「円安とラグジュアリーブランドの値上げの影響で、中古ブランド品へのニーズが高まっており、日本で中古ブランドの買い取り・販売を展開するRECLOが今年の独身の日セールのTモールグローバルのファッションカテゴリーで売り上げ4位に入るなど、躍進している日本企業は少なくない」という。

SNS、デジタルへの取り組みが課題

一方で、日本企業にある程度共通する「弱点」もある。それは「商品のコンテンツ化」だ。董氏は「Tモールグローバルでも日本ブランドの幅広さ、売り上げの伸びはいちばんで、商品力でみると日本製品は最も需要が高い。ただ、ほかの国と比べて弱いのが、商品の良いところを紹介する力です」と指摘した。

劉氏も「日本の企業が成功したのは『良い商品』『良いサービス』をつくれたから。コロナ禍前は中国人が日本旅行でそれを体感し、買って、発信していたのでいい商品をつくっていれば良かったですが、日本に来ることができない今は日本企業がSNSなどで自分たちの良さを発信しなければなりません」と語る。

BEENOSグループの調査でも、日本の商品を購入する際の情報源をSNSから得ていると回答した外国人が多く、「特にZ世代は新しいもの、自分らしい消費を好み、情報収集・拡散手段としてSNSを使い、精神面の充足やストーリーへの共感が購入動機になります。日本にはZ世代に刺さりやすいウィスキー、バイク用品、美容機器、アニメ関連製品、ポップアートと豊富な商品があるので、デジタルマーケティングに力を入れてストーリーを伝えてほしい」(董氏)。

日本は水際対策を緩和し、外国人旅行者の姿も目立ち始めた。中国は今もゼロコロナ政策を続けており、だからこそ越境ECが拡大しているわけだが、劉氏は「それもいつかは終わります。商品のストーリーや品質を丁寧に伝えることは、中国人消費者が将来日本に行くときの導線づくりにもなります。中国人消費者を理解する『窓』として越境ECを活用してほしい」と話した。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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