現代短歌の旗手は悩んだ「私の歌に需要あるか?」 全短歌集を出した歌人の枡野浩一氏に聞く

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現代短歌の旗手、枡野浩一
枡野浩一(ますの・こういち)/歌人。1968年生まれ。専修大学経営学部中退、リクルートでアルバイト後、広告会社AZに入社しコピーライター。フリーの雑誌ライター等を経て、97年『てのりくじら』『ドレミふぁんくしょんドロップ』を同時発売し歌人デビュー。ほかに『かんたん短歌の作り方』『ショートソング』『ドラえもん短歌』など作品多数。(撮影:今井康一)
短歌に何度目かのブームが来ている。自然な現代語でつづる現代短歌、そのファン層拡大に一役買った歌人のデビュー25周年作品集。歌壇に背を向けつつ、「前向きになれと言われて前向きになれるのならば悩みはしない」の自作を地で行く当人。周囲の熱量に押されてようやく出た短歌集が、今注目を集めている。

歌中の言葉は置き換え自由

毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集
『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』(枡野浩一 著/左右社/2530円/381ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──本のタイトルに使う短歌は即決だったのですか?

実はもう1つ、10年前の作品「心から愛を信じていたなんて思いだしても夢のようです」も考えていました。離婚を経た今だから作れた歌。愛に疲れた人は思い当たるだろうな、でもあのときは本当に信じていたんだ、そんな気持ちを詠んだ。ところがデザイナーさんから、愛を信じている若い人には響かないのでは?と言われ、確かにその視点はなかったなと。

「毎日のように手紙は来るけれど〜」は20歳の頃に100首ほど一気に作った中の1つで、高校の国語の教科書にも載った代表作です。当時の文通相手からの手紙を待ち焦がれて書いた歌。最近短歌専門誌で、ある若い歌人の方が、手紙が来ない切なさより、毎日のように手紙が来るのがうらやましい、と評論してくれた。そうか、個人情報問題もあって、今の時代郵便物が毎日山ほど来るわけじゃないんだ、と気づいた。手紙にピンと来なければ、迷惑メールやLINEに置き換えて読んでほしい。

──歌人は言葉一つひとつにこだわっているはず、と思い込んでいましたが、そこは置き換え可能と。

次ページ25周年の出版話にかなり後ろ向きだった
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