新田恵利さん「悔いなし介護」母との6年半の軌跡 夫の介護を見据える加藤綾菜さんと本音対談
加藤:介護のゴールって、悲しいけれど看取りであることが多いですよね。そのあたりのことを少し伺ってもいいですか。
新田:もちろんです。母は昔から「恵利にはたくさん面倒を見てもらったから、最期は絶対にありがとうと言って死ぬからね」と言っていたんです。すると本当に最期、兄と私が両脇にいて、そのころには言葉も発せられなくなっていたんですけど、右の私を見て確認して、左の兄を見て確認して、その後、「あ、あ」って声を出して、そのまま目を閉じたんです。きっと「ありがとう」って言おうとしたんですね。母は約束を守ってくれたんだと思います。
加藤:それもおうちで看ていたからこそ、見逃さなかったのかもしれませんね。
新田:母がまだ元気だったころに一緒にテレビを見ていたら、日本伝統の死に装束のことをやっていたんです。母に「あれを着る?」と聞いたら「嫌だ」って。「だったら最期に何を着たい?」って聞くと、母が「ウエディングドレス」と答えたんです。
加藤:わ~ん、すてき!
ドレスを完成させることができなかった
新田:昭和一桁生まれで、ウエディングドレスを着たことがなかったんですね。だんだん母が弱ってきて、約束したドレスを用意しなければならないとリアルに考えたとき、待てよ、死後硬直があると普通のドレスは着せられないかもって……。
それでいろいろと調べたら、エンディングドレスというガウン型のものがあることがわかったんです。
私はハンドメードが得意なので、ウエディングドレス風のエンディングドレスを自分で作ることにしました。母の看病をしながら8割方できたのですが、仕上げたら本当に死んでしまうような気がして完成させなかったんです……。結局、母が息を引き取った後、泣きながら仕上げて、着せてあげて見送りました。
加藤:お母様に見てもらえなかったのが残念ですね。
新田:介護には悔いがないのですが、たった1つ悔いがあって、このドレスをもっと早く仕上げて母に見せてあげたらきっと喜んでくれただろうなと思うんです。何でも早め早めに、もっともっと母が元気なうちに「ママ、できたよーっ!」て笑顔で見せればよかったです。
加藤:でも、私が今までに話を聞いた誰よりも幸せなお母様だと思います。私ももっと母を大事にしようと改めて思いました。とても感動しました。ありがとうございます。
新田:こちらこそ、ありがとうございました。
取材・文/中村裕美(羊カンパニー) 撮影/北村史成
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