MITやハーバードなど名門校で音楽授業が盛んな米国、どんな変化が起きた? 「STEAM教育」重視の時代における音楽の重要性

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ではこれからの時代、暗黙知に気づき探究を深めていくような感性を育むには、日本での音楽教育はどうあるべきでしょうか。

現在、日本にも一般教養として音楽を学べる総合大学があります。小規模であっても、芸術科目・人文科目として存在する意義は大きいでしょう。伝統的な西洋音楽が中心ですが、将来は米国の大学のようにワールドミュージック、ジャズ、ポピュラー音楽、ミュージカルなどジャンルの幅を広げたり、社会学、心理学、科学、コンピューターサイエンスなど他領域と融合させたりするなど、総合大学の強みを生かした学びも可能ではないでしょうか。

また体感を伴う学びとして、プロのアーティストや演奏の現場と連携したり、オーケストラや室内楽などを単位認定したりすることも将来的に考えられます。

その前段階となる高校や義務教育においては、音楽だからこそ育まれる資質を1つひとつ意識し、音楽の授業で生かしていただきたいと思います。例えば「音を聴く」ことは、他者や環境から気づきを得る繊細な受信力につながります。「思い切り発声する、全身で表現する」「他者と一緒にハーモニーをつくる」ことも豊かな発信力や協働力につながるでしょう。こうした感覚は、大学のPBL(課題解決型授業)だけでなく、高校で今年度から設置された7つの探究科目などの一般教科でも生かせるのではないでしょうか。

例えば世界史探究や日本史探究では、ある時代の音楽を通して、当時の出来事を体験した人々の心情に触れるといった機会がつくれそうです。「なぜそれが起きたのか」「自分たちであればどう向き合うのか」という当事者意識を踏まえた問いと、学びを現代に生かす視点も育めるでしょう。地理探究ならワールドミュージックを聴き、世界各地の人々の営みや社会のあり方を実感するなどの授業もあってよいかもしれません。

そもそも音の響きはこの世界を解明する物理現象の1つとして、古代ギリシャ時代のピタゴラス以来、多くの科学者によって探究されています。昨今重視されているSTEAM教育も示すように、音楽や芸術を含む教科横断によって感覚が開かれ、より深い問いが生まれるでしょう。

これからは、世界の人々と共に未来の世界をつくっていく時代。日本人ならではの繊細な感覚と、自由な感性から生まれるダイナミックな発想力が、音楽を通じてさらに育まれていくのではと期待しています。

(注記のない写真:空/PIXTA)

執筆:音楽ジャーナリスト 菅野恵理子
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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