MITやハーバードなど名門校で音楽授業が盛んな米国、どんな変化が起きた? 「STEAM教育」重視の時代における音楽の重要性

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
現在、日本ではリベラルアーツやSTEAM教育の重要性が注目されているが、実際の教育現場に目を向けると、時代を見据えた形での芸術領域の活用や取り組みは少ないように見える。とくに美術に比べ、音楽を生かした教育活動は目立たない印象だ。一方、米国の有名大学では音楽の授業が盛んに行われているという。主に2012年と19年に現地を取材した音楽ジャーナリストの菅野恵理子氏が、米国の事例を解説し、日本における音楽活用の可能性を考える。

米国の大学はなぜ「音楽の授業」を大切にしているのか?

現在、米国の主要大学では、多くの学生がリベラルアーツとして音楽を学んでいます。科学や技術の革新が進む現代において、なぜ音楽が重視されているのでしょうか。一言で表現するなら、「人間とは何か」を学ぶためと言えるでしょう。

菅野 恵理子(すがの・えりこ)
音楽ジャーナリスト
上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。現在は、海外での豊富な音楽教育取材・国際コンクール演奏評を基に、音楽で人を育て、社会をつなげることをテーマとして講演・教材開発・執筆・コンサルティングなどを行っている。著書に『MIT 音楽の授業』(2020年、あさ出版)、『ハーバード大学は「音楽」で人を育てる』『未来の人材は「音楽」で育てる』(15年、18年、ともにアルテスパブリッシング)、インタビュー集『生徒を伸ばす!ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア)など、オンライン連載に『海外の音楽教育ライブリポート』『子どもの可能性を広げるフランスのアート教育』(ともにピティナHP)など。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー
https://www.erikosugano.com/
(写真:菅野氏提供)

1855年に米国初となる音楽学科が創設されたハーバード大学では、現在、美学的な学びを深める教養科目として音楽・芸術科目が開講されています。例えば「初日―5つの世界初演」という音楽科目では、当時革新的とされた5つの曲を取り上げ、当時の新聞記事や書簡などの1次資料に目を通しながら、「なぜ人々はそのように反応したのか」を考察します。さらに作曲家に新曲を委嘱し、その世界初演を聴くことによって、自分自身が新しい概念をどう受け止めるのかといった体験もします。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事