玉川徹“様子見復帰"に強烈な不信募る3つの訳 演出の言及なくテレ朝は個人に責任を負わせたまま

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20日の放送で玉川さんは、その後の「円安の影響を受けて海外で働く日本人が増加」などの話題には登場しませんでした。出演時に「玉川徹 テレビ朝日報道局 取材生活30年 政治や経済を独自目線で伝える」という紹介文が表示されていたことからも、当面は「取材したテーマ以外は出演しない」という方針なのでしょうが、今後どうなるのかはわかりません。

“様子見の両にらみ”に募る不信感

これは見方を変えれば、「視聴率を獲れる玉川を辞めさせるのはもったいない」「クビにはせず、視聴者の反応を見ながら出演させていこう」という視聴率至上主義によるものではないでしょうか。視聴者の反応が良く、視聴率が上がったら、再び出演時間を増やし、逆に視聴者の反応が悪く、視聴率が下がったら、出演時間を減らしていく。

もし後者であれば、タレントや文化人のような扱いから、通常のスタッフに戻したうえで、「後継者を探せばいい」というだけのこと。できるだけ視聴率を獲れる形を残そうとしながら、「辞めさせる」という決断の余地も残している。目の肥えた現在の視聴者には、そんなテレビ朝日にとって都合のいい両にらみのような意図が透けて見えるからこそ、今回の対応に納得できないのでしょう。

そもそも局のディレクターがコメンテーターを務めること自体がハイリスクであり、組織としてはコメントを管理する必要性があります。しかも、これまでの玉川さんは記者のように取材内容を話すわけでも、解説委員のように解説に徹するわけでもなく、持論を展開することを売りのようにしていました。他局のテレビマンから見たら、「いくら視聴率が獲れたとしてもマネはしない」という極めて危なっかしい演出だったのです。

週5日のペースで1年中、生放送番組に出演し、あらゆる話題に関わり、加えて、劇場型の演出をしていたのですから、いつ失言が発生してもおかしくない状況でした。テレビ朝日は一連の騒動によって、「これらに対する危機管理の薄い、視聴率至上主義の組織ではないか」と印象づけてしまった感は否めないでしょう。

玉川さんの復帰うんぬんではなく、政治的な意図を踏まえた演出に対する言及がなかったこと。テレビ朝日が個人に責任を負わせるような対応をしたこと。そのうえ、まだ視聴者の顔色を見ながら一局員にリスクを負わせて視聴率を獲ろうとしていること。主にこれら3つの納得できないことが重なっているからこそ、失言騒動はいまだに物議を醸しているのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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