湘南モノレール「ピンクの車両」が担う重大な使命 乳がん撲滅「ピンクリボン運動」を1年中啓発

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――以前は、がんといえば胃がんが多かったと思いますが、乳がんが増えている原因はどんなところにありますか。

土井医師
2020年10月に行われたピンクリボン号リニューアルイベントであいさつする土井医師(筆者撮影)

女性のホルモン環境の変動が、大きく影響していると思われます。乳がんのがん細胞の6~7割は、エストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンの影響を受けて分裂・増殖するのですが、エストロゲンは月経~排卵の間(卵胞期)に分泌量が増加します。初潮を迎える年齢が早まり、出産する子どもの人数が平均1.42人(2018年)という現代女性は、一生涯で500回くらいの月経を経験します。戦前の女性は50回程度でしたから、大幅な増加です。このホルモン環境の変動が、乳がん発症率の増加に大きく影響しています。

また、閉経後の女性の体型の変化も大きな原因です。昔は痩せ型の人が多かったですが、今は太っている人が増えました。脂肪組織に含まれるアロマターゼという酵素は、男性ホルモン(アンドロゲン)から女性ホルモン(エストロゲン)をつくり出す働きがあるため、皮下脂肪の多い人ほど、閉経後もエストロゲンが高いままキープされてしまうのです。

検診の普及率はまだ低い

――海外と日本を比較して、乳がんを取り巻く状況に違いはありますか。

先ほど、乳がんは罹患しても死亡率が高くないと申しましたが、残念なことに、海外では乳がんによる死亡率が低下する一方で、日本では逆に上がり続けています。死亡率を下げるには2つの因子が必要と考えられます。1つは検診による早期発見。もう1つは、万一、罹患したときに薬物療法がきちんと行えることです。

このうち薬物療法についてはガイドラインがきちんと制定され、日本中どこでも治療ができる時代になりました。ところが、検診の普及率は依然として低いままと言わざるをえません。神奈川県では、2000年からマンモグラフィーによる検診が制度化され(それ以前は触診による検診だった)、その後、検診普及の啓蒙活動に力を入れてきましたが、いまだに受診率は46%です。

ピンクリボン号登場直後
2016年、デビュー直後のピンクリボン号(撮影:尾形文繁)
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