金価格が本格的に上昇に転じるのはいつなのか アメリカの利上げで目先停滞でもいずれ上昇へ
こうしたなか、それまで比較的好調な地合いを維持していた商品市場の状況も、かなり様変わりしている。
つい夏前後までは、商品市況は新型コロナウイルスの感染拡大に端を発したサプライチェーン問題や、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うウクライナからの穀物輸出停滞やロシアからのエネルギー輸出の大幅減少、といった供給面の不安材料を背景に一気に騰勢を強めた。これらによってインフレのペースが想定以上に速まったのは間違いない。
だが、これらの流れも一変。世界的な景気の悪化に伴う需要急落という弱気材料が前面に押し出され、軟調な地合いを強めている。8月の消費者物価指数(9月13日発表)が予想を上回る伸びとなり、株価が急落したのは記憶に新しいが、その中でもエネルギー価格は大方の予想どおり、前月比で5.0%も下落した。
強気のサプライズとなったのは、エネルギーと食品価格を除いたコア指数だ。こちらは前月比0.6%、前年比6.3%上昇と予想を大きく上回ったほか、前月からも上昇のペースが速まった。
今年前半はエネルギーや食品価格の急速な伸びがインフレを牽引してきたが、現在はそれらを除いたコア指数の力強い伸びが物価を高止まりさせている。これは、インフレが一時的なものではなく長期化する恐れが高いことを意味しており、FRBが積極的な引き締め方針を長期間維持せざるをえない一因にもなっている。
金は再び輝きを取り戻せるのか
では、銅や原油などの商品価格が景気悪化による需要減少懸念から下落する中で、金(ゴールド)価格はどうなるだろうか。金価格は、金融政策や金利動向、ドルの動きに大きく影響を受けやすく、ことさら地合いが弱くなっていると見ておいたほうがよい。
日本で暮らしていると円安であまり気づかないが、NY金市場は10月4日現在で1トロイオンス=1700ドル前後と、2020年夏以来の安値水準で推移している。もしこの先も金利上昇やドル高が一段と進むなら、1トロイオンス=1500ドル台まで下げ幅を広げることがあっても、何ら不思議ではない。
もっとも、金にはもうひとつ、安全資産として需要という側面があることも忘れてはならない。現時点ではほとんど意識されていないが、このまま株価下落が進み、市場がパニック的な状況に陥るなら、資金の逃避先として改めて注目を集めることも十分にありうる。
また、金は中央銀行の金融政策や金利の動向に対して、ほかの商品よりも敏感に反応することが多い。それだけに、足元の弱気要因が出尽くしとなった際は、他の市場に先駆けて上昇に転じる可能性も高い。実際、2001年の「9.11同時多発テロ事件」後や、2008年9月のリーマンショックに伴う急落局面では、金相場は株などほかの市場に先駆けて上昇を開始している。
もちろん、現時点では下落の流れに逆らうべきではないだろう。だが、どのような悪い材料でも、いずれはすべて出尽くしとなるものだ。そうした際に、まずまっ先に資金を戻す対象として、金市場を選択するのも悪くはない。株式市場への投資を再開するのは、金相場の底入れや反発を確認してからでも、決して遅くないと考える。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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