クラウド化前提の「校務の情報化」に盲点、民間の教訓生かしSaaS化まで議論を 利便性とセキュリティーを両立させる具体論

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GIGAスクール構想によって、授業や学習のICT化は浸透しつつあるが、その一方で、全国の学校で懸案の1つとして浮かび上がっている課題が「校務の情報化」だ。教員の業務負担がますます高まっている中、校務については情報システムが旧来的なままにとどまっている。学校では今、校務支援システムをクラウド化することで、「教員の働き方改革」を実現しようとする動きがある。だが、そこには別の課題もあるようだ。校務の情報化、クラウド化に学校はどう対応すればいいのか。ICT市場専門のリサーチコンサルであるMM総研取締役研究部長の中村成希氏に話を聞いた。

いまだオンプレミスでサーバーを運用している学校も多い

昨年12月から校務の情報化について議論している文部科学省の「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」が、今年8月下旬に中間まとめを出した。これまで専門家会議では、①学校の働き方改革を進めるための情報化のあり方、②校務系システムのデータとほかのシステムとの連携の可能性について検討してきた。

実際、現場の状況はどうなっているのかというと、2021年5月1日時点での状況を調べた「校務支援システム導入状況調査」では、校務に関する業務管理のため教職員が一律で利用する「校務支援システム」を導入済みの自治体は80.4%。このうち学籍、成績、保健などの情報が統合された「統合型校務支援システム」を導入済みの自治体は68.9%で、年々整備率は上昇している。だがインターネット接続率は48.7%で、教職員が在宅で校務支援システムを利用できる環境になっている学校は少なく(常時利用可能4.7%)、学習系データやほかのシステムとの連携もほとんど進んでいなかった。

しかも、世の中でこれだけクラウド利用が進んでいる中で、学校現場ではいまだ多くがオンプレミスでサーバーを運用しているという。GIGAスクール構想で授業や学習の情報化が進む一方、校務の情報化は遅れている。また教員の長時間労働解消のために働き方改革が急務となっているにもかかわらず、「校務を行うときは職員室の専用端末で行わなければならない」という柔軟性を欠いた状況も珍しくなく、早急に校務DXを進めていく必要があるということが背景にある。

そこで今回の中間まとめでは、校務支援システムのクラウド化を前提に、校務DXのモデルケース創出やガイドライン策定の必要性について言及している。また今後は、先進自治体の状況把握をはじめ、システムの更新等の運用上、またセキュリティー上の課題、財政支援のあり方などについて検討し、校務DXの進め方についてビジョンや施策を示す必要があるとまとめている。

だが具体的にどう進めていくのかは、課題が山積しているといえるだろう。校務のクラウド化は共通の前提とはなるものの、各自治体で校務支援システムの現状はもちろん、自治体の規模や予算も異なるからだ。

ただGIGAスクール構想によって、すでに「Microsoft 365 Education」や「Google Workspace for Education」などのITツールは現場に普及しており、一部の学校や教育委員会ではクラウド化の動きが見え始めている。

実際、児童・生徒の欠席管理や保護者との連絡、施設や行事の管理、資料の共有などをクラウド上で行い校務の効率化を進めている学校は多くある。今後は、クラウドでできる校務は積極的にクラウドに移行し、ペーパーレス化をはじめ校務のデジタル化、効率化を進めていくことが求められるだろう。

これまでは、教員が校務と教務で使う端末が異なるということも珍しくなかったが、クラウド化すれば端末1台で業務ができるようになる。それにより端末の整備コストが抑えられるのはもちろん、柔軟な働き方の実現や災害などの緊急時対策にもつながる。

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