3観点「学びに向かう力、人間性等」の評価に限らず「知識観」のアップデートを 丸暗記と、「概念」として習得した知識の違い

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
佐藤 真(さとう・しん)
関西学院大学教授・放送大学客員教授。秋田県生まれ。東北大学大学院博士課程後期課程単位取得退学。専門は教育課程論、教育評価論など。文部科学省「学習指導要領等の改善に係る専門的作業等」協力者、「教育研究開発企画評価会議」委員なども務めた。『各教科等での「見通し・振り返り」学習活動の充実』(教育開発研究所)、『小中連携で子どもが育つ!』(学事出版)など編著・著書多数
(写真:佐藤 真氏提供)

「数値化できない『学びに向かう力、人間性等』の評価に目が向きがちですが、それに加えて大切なのはこの『知識観の変化』を理解し、アップデートすることかもしれません」

従来の教育を受けてきた教員が考える「知識」と、新たな学習指導要領で求められる「知識」はすでに異なるものになっている。だからこそ、根本的なマインドチェンジが必要なのだ。

そもそも「教わる」とはどういうことか。基礎的な概念を改めて振り返ることが、新たなマインドへの理解につながる。

「今も一斉学習に力を入れているのは、日本を含む東アジアの数カ国といえます。世界のほとんどはグループ学習にシフトしている。おりこうさんに座ってノートを取るだけでは、『学ぶ』ことよりも『教えてもらう』ことにとどまってしまいます」

佐藤氏は「とりわけ『考える』とはどんなことなのかわからない子どもへの支援が重要です」と続ける。ただ「考えてみましょう」と言うのではなく、教員自身も「何のために考えさせるのか」を認識し、「比べてみましょう」「分類してみましょう」など、明確な発問をする必要があると指摘する。それにより、子ども自身に「これとこれは何が違うのだろう」などという問いが生まれる。

「教科書で学んだことのまとめは、これまでは教員自身が行うことが多かったと思います。でもその思考の可視化から操作化、そして構造化までの一連の作業を、ぜひ子どもにやらせてほしいと思います。自ら問うこと、問い続けることこそが、主体的に学ぶ前向きな態度といえるのですから」

この佐藤氏の言葉を裏付ける出来事がある。大阪市のある小学校の子どもたちが、東日本大震災の被災地の住民と手紙のやり取りをした。受け取った手紙では、その東北の町の様子が紹介されており、「商店街にはこんなお店があります」などの記載があった。その後、今度は子どもたち一人ひとりのタブレットを活用し、実際の町の様子を映像で見た。そこで子どもたちは無意識に手紙と映像の内容を比較し、あることに気がついた。

「手紙に書いてあったお店が、商店街の映像にはないみたいだ。どうしてだろう」

調べたり聞いたりしてみると、震災の記憶が徐々に風化する中でその地域を訪ねる人が減り、コロナ禍の打撃もあって、手紙にあった店は閉店してしまったということがわかった。比較から生じた問いは、子どもたちに思わぬ事実を知らせた。ここからまた何を感じ取るか、それも大切な学びだ。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事