「鑑定会社への働きかけ」があったと金融庁が認定した3物件が判明した。具体的にどのようなやり取りがあったのか。その内幕に迫る。
REIT(不動産投資信託)をめぐって、ある不動産会社が揺れている。
渦中の会社は東証プライム上場の「日本エスコン」。商業施設の開発を中心に業績を伸ばし、2022年12月期の売上高は1000億円の大台に乗る見込みだ。長らく独立系として経営してきたが、2021年4月に中部電力の連結子会社となっている。
快進撃を続けた日本エスコンがつまずいたのは2022年7月。子会社のREIT運用会社であるエスコンアセットマネジメント(以下、エスコンAM)に対して、金融庁が「不動産鑑定会社への働きかけ」を理由に、REIT業界としては14年ぶりとなる行政処分を下した。
金融庁が問題視した「働きかけ」とは何か。エスコンAMは上場REITである「エスコンジャパンリート投資法人」を運用しており、主に日本エスコンからREITに物件を取得させている。REITの内規では、高値づかみを防ぐ目的で、第三者である不動産鑑定会社の評価額を取得額の上限とするよう定めていた。
“言い値”で物件を取得させた
REITの物件取得の際には、売り主である日本エスコンの希望売却価格を、鑑定評価額が下回ることがあった。その際エスコンAMは親会社の“言い値”を優先し、鑑定会社に働きかけてより高い評価額を出させていた。これが鑑定会社の独立性を損なう行為とされ、金融庁から処分を受けたのだ。
行政処分の発表直後、日本エスコンの広報担当者は東洋経済の取材に対して「鑑定会社への働きかけは、エスコンAMが独自に行った。当社から強要したわけではない」と回答していた。
だが、その後取材を進めると、親会社である日本エスコンがエスコンAMに対して自らの希望する価格で取得するよう求め、エスコンAMがあの手この手で評価額の引き上げを試みる実態が浮かび上がってきた。
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