北朝鮮の「ローテク兵器」を買うロシアの惨状 枯渇する弾薬、中国も兵器供給には及び腰

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その後、こうした機密情報の開示は小康状態となっていたものの、アメリカ政府はここに来て機密解除を再開するようになっている。イラン製ドローンの購入やロシア軍の兵員確保問題などに関する最新の機密情報を明らかにすることで、ロシア軍の苦戦を目立たせようとしているわけだ。

大規模な経済制裁は、少なくともまだロシアを機能不全に追い込むには至っていない。ウクライナ侵攻によるエネルギー相場の高騰でロシアの国庫は満たされ、国際決済網から排除された国内銀行の経営悪化や輸出入規制の影響を和らげることができている。新興財閥オリガルヒに対する個別制裁も、今のところウラジーミル・プーチン大統領の権力の切り崩しにはつながっていない。

しかしアメリカ当局者によると、軍隊を立て直す能力をそぐという点においては、ヨーロッパとアメリカの経済制裁は効果を上げている。兵器や兵器の製造に欠かせない電子機器の調達からロシアを遮断しているのが、こうした経済制裁だ。

「制裁破りの中国」も忌避する一線

ロシア政府は中国がこれらの輸出規制に抵抗し、ロシア軍への供給を続けることを期待していた。ところが、中国はロシアの石油を割引価格で購入することには意欲的な反面、少なくともこれまでのところはロシア軍向けの輸出規制を尊重し、装備品や軍事部品を売り渡そうとはしていない、とアメリカの当局者は語っている。

アメリカのジーナ・レモンド商務長官は中国に対し、中国最大の半導体受託製造会社、中芯国際集成電路製造(SMIC)などが対ロシア制裁に違反した場合、半導体製造に必要なアメリカの技術へのアクセスを遮断し、これらの企業を事実上の事業停止に追い込むと繰り返し警告している。

アメリカの圧力を前に大半の国々が慎重な対応をとる中、ロシアはイランや北朝鮮との取引に的を絞るようになった。

イランと北朝鮮はどちらも、アメリカや世界からの制裁の影響で国際貿易からほぼ締め出されているため、ロシアと取引したところで失うものはあまりない。北朝鮮から兵器を購入すれば、同国からの武器拡散の規制を目的とした国連決議に違反することになる。

ただ、ロシアによる北朝鮮からの兵器調達が、こうした輸出規制にどの程度関わるものなのかは定かではない。北朝鮮が製造する152ミリ砲弾や多連装ロケット砲「カチューシャ」にはハイテクの要素は何もないと、アメリカン・エンタープライズ研究所の軍事専門家フレデリック・ケイガン氏は言う。

あるアメリカ政府関係者は、北朝鮮との新たな取引はロシア政府が切羽詰まっていることの表れだと述べた。

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